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1ねんせいのにほんむかしばなし
ゆうれいの そでかけまつ
むかしむかし、 りょうしが かわにふねをだして、 さかなつりを していました。
ところが、 どうしたことか、 きょうは 1ぴきも つれません。
「こんやは、 あきらめて かえるとするか」
りょうしが そうおもっていると、 つりざおが おおきく、 ひっぱられました。
おおものの てごたえです。
りょうしが よろこんで ひきあげると、
「へっ? これは、 ・・・ギャァァァーー!」
なんと、 つりいとの さきには、 わかいむすめの なきがら(→したい)が ひっかかって いました。
「わわぁ、 なむあみだぶつ、 なむあみだぶつ」
りょうしは、 なきがらを すてるわけにもいかず、 ふねに ひきあげました。
「ああ、 まだ わかいというのに、 かわいそうに」
りょうしは、 むすめの なきがらを ちかくの おてらに はこんで、 おしょうさんに おきょうを あげて もらいました。
すると つぎのばんから、 おてらの ふるい まつのきの したに、 あのわかいむすめの ゆうれいが あらわれはじめたのです。
「はて? てあつく おきょうを あげてやったのに、 まだ、 このよに うらみでも あるのだろうか?」
おしょうさんが ふしぎに おもっていると、 むすめの ゆうれいが あらわれて、
「おきょうを あげてくださり、 ありがとうございました。 まよわず、 あのよ(→てんごく)へ いきたいのですが、 こころのこりが・・・。 ひとこと、 おきき くださいませんか?」
と、 かすかなこえで、 いいました。
「なんなりと、 はなして みなさい」
「はい。 じつは、 すきなひとのもとへ、 およめに いくことに なっていたのですが、 いえが まずしいため、 よめいりの きものが つくれないでいました。 そのため、 せっかくの けっこんばなしが、 こわれてしまったのです」
「そうか、 それはさぞ、 つらかったろう。 よしよし、 いまとなっては ておくれながら、わしが、 よめいりの きものを、 そろえてやろう」
おしょうさんが そういうと、 むすめの ゆうれいは なみだを ふいて、 フッと きえさりました。
あくるひ、 おしょうさんは やくそくの きものを かってきて、 ふるいマツの えだに かけておきました。
すると、 よなかに むすめの ゆうれいが あらわれて、 きものを きがえて いったのでしょう。
よめいりの きものは きえて、 かわりに、 むすめが おぼれて しんだときの きものの そでが、 えだに かけられていました。
そのときから、 このマツは 「ゆうれいの そでかけマツ」と、 よばれるように なったのです。
おしまい
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