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        6年生の日本昔話 
          
          
         
おわかれにきたむすめ 
      
       むかしむかし、ある村に、一人暮らしのおばあさんがいました。 
 娘を遠くの町へお嫁にやってしまってから、ずーっと一人暮らしです。 
「この間の娘からの手紙では、体が思わしくないといっていたが、今頃、どうしておるかのう? ・・・心配だな」 
 
 ある晩の事、おばあさんがいつもの様に娘の事を考えていると、いつの間に帰って来たのか、娘が座敷の外でボンヤリと立っていました。 
「おや? おおっ、よく帰って来たな」 
「・・・・・・」 
「どうだい、体の具合は?」 
「・・・・・・」  
「まあ、とにかく中へお入り」  
 すると娘はスーッと滑る様に座敷へ入り、おばあさんにおじぎをしました。 
 いつもは明るく元気な娘がニコリともしないし、ひとこともしゃべりません。 
 娘は仏壇に手を合わせると、おばあさんにもう一度おじぎをして、そのままスーッと消える様にどこかへ行ってしまいました。 
「はて、どうしたんじゃ? 
 さっきの娘が着ていたあの着物は、娘を嫁にやる時に持たせてやった物。 
 娘に間違いないのに、どうして、ひとことも言わずに帰ってしまったんじゃ?」 
 
 次の朝。 
 おばあさんのところに、娘がお嫁に行った家から使いが来ました。 
 驚く事に、娘が昨日の晩、息を引き取ったというのです。 
「娘が・・・。 
 それでは、昨日来た娘は」 
 おばあさんは、使いの男に尋ねました。 
「もしや、娘が死んだのは何時頃の事で、その時は、これこれこういう柄の着物を着てはおらなかったじゃろうか?」 
「はい。確かにその通りです。・・・ですが、どうして知っているのですか?」 
 おばあさんは、目に涙を浮かべて言いました。 
「ああ、やっぱり。あれは娘が幽霊になって、お別れに来てくれたんだね」 
 後からおばあさんに訳を聞いた使いの男は、 
「不思議な事もあるものだ」 
と、言いながら、町へ帰って行きました。 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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