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        3年生の日本昔話(にほんむかしばなし) 
          
          
         
一休のくそとなれ 
      
       むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判(ひょうばん)の小僧(こぞう)さんがいました。 
   まだ一休さんが小さい頃(ころ)、はじめて修行(しゅぎょう)をしていた、お寺の和尚(おしょう)さんは、ひどいけちんぼうでした。 
   おまけに、お寺では食べてはいけない、塩(しお)ザケを、みそ汁(しる)の中へにこんで、  
  「ああ、うまい、あったまるのう」 
  と、平気(へいき)でたべているのです。 
   とうぜん、一休さんには、一度(いちど)もわけてはくれません。  
   しかも、塩(しお)ザケを食べるときの、和尚(おしょう)さんの言葉(ことば)が、とても気どっていました。  
  「これなる塩(しお)ザケよ、そなたは、かれ木とおなじ。たすけたいと思うても、切り身(きりみ)にされては、生きて海をおよぐことなどできぬ。よって、このわしに食べられ、やすらかに極楽(ごくらく)へまいられよ」 
  「ふん、なにが極楽(ごくらく)だ。バチあたりの和尚(おしょう)め」 
  と、一休さんも、はらいせに、かげ口をたたいていましたが。 
   さて、ある日のこと。  
   朝のおつとめをすませると、一休さんは、さかな屋(や)へ走っていって、大きなコイを一ぴき買ってきました。  
   お寺へもどると、一休さんは、まな板(いた)とほうちょうを取り出(とりだ)して、なベをかまどにかけました。  
   和尚(おしょう)さんは、ビックリして、  
  「一休! おまえ、そのコイをどうするつもりぞ!」 
  「はい。このコイを食べます。このあいだ、和尚(おしょう)さんに教わった、お経(きょう)をとなえますで、きいてください」 
  「おまえ、いったい正気(しょうき)か!」 
  「はい、正気(しょうき)でございますとも」 
   一休さんは、すこしもあわてず、コイをまな板(いた)へのせて、お経(きょう)をとなえました。  
  「これなる生きゴイよ、そなたは、この一休に食べられて、くそとなれ、くそとなれ」 
   となえおわると、右手に持(も)ったほうちょうを、ストンとふりおろして、コイの頭を落(お)としました。  
   そしてさっさと切り身(きりみ)にすると、なベに放り込(ほうりこ)みます。  
  「むむっ。・・・『くそとなれ』か」 
   和尚(おしょう)は、いままで塩(しお)ザケにむかって、『極楽(ごくらく)へまいられよ』なんていったのが、はずかしくなりました。  
  『くそとなれ、くそとなれ』と、いいはなった、小さい一休さんに、してやられたと思ったのでした。 
  (こいつはきっと、大物(おおもの)になるぞ。わしのところではなく、もっといい和尚(おしょう)のところにあずけるとするか) 
  「それでは、ちょうだいします」 
   一休さんは、和尚(おしょう)さんの顔色など、うかがうこともなく、コイこくをおいしそうにたべました。  
   
  ※コイこくとは、コイを輪(わ)ぎりにして、煮込(にこ)んだ、みそ汁(しる)です。 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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