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        3年生の日本昔話(にほんむかしばなし) 
          
          
         
金の持ち主(もちぬし) 
      
       ある日、庄屋(しょうや)さんが道を歩いていると、大きな袋(ふくろ)が落(お)ちていました。 
   中を見ると、小銭(こぜに)がザクザクと入っています。 
   ざっと見ただけでも、二千枚(2000まい)はありそうです。  
  「こらあ、えらい落(お)としもんだで、落とし主(おとしぬし)は泣いとるじゃろう」 
  と、庄屋(しょうや)さんは家に持って帰(もってかえ)り、村に知らせの者(もの)をやりました。 
   すると、さっそくあらわれたのが、吾助(ごすけ)と兵六(ひょうろく)です。  
   ふたりとも、 
  「おらのだ」 
  「いんや、おらのだ」 
  と、言うのです。  
   袋(ふくろ)をかくして、ふたりの前に出た庄屋(しょうや)さんは、  
  「落(お)としたお金のことを、くわしく話しておくれ」 
   まずは吾助(ごすけ)が、  
  「へえ、あのお金は、おらがまずしい中から一文、二文とつぼにコツコツためたもんだべ。だども、おっかあが病気(びょうき)になったで、町へ医者(いしゃ)さ呼(よ)びに行くのに、袋(ふくろ)に入れて持(も)って行く途中(とちゅう)だったべ」 
   これを聞いていた、兵六(ひょうろく)が、  
  「うそをつけ、この盗っ人(ぬすっと→どろぼう)が。あれはおらがつぼにためた金だ。いっしょうけんめいためてただが、今日つぼを見ると空っぽになってただ。きっとこいつが盗(ぬす)んで袋(ふくろ)に入れて行こうとしたにちがいねえ、庄屋(しょうや)さん、こいつはとんでもねえやつでごぜえますだ。だいいち、こんな貧乏人(びんぼうにん)に金がためられるわけねえだべ」 
   ジッとふたりの話を聞いていた、庄屋(しょうや)さんは、  
  「そうかい、ところで吾助(ごすけ)に兵六(ひょうろく)。なくしたお金は、何枚(なんまい)ぐらいじゃった」 
  「それが、数えたことがねえだから、だども、つぼの首まではあっただ」 
  「おらもはっきりとは。だども、きっちりつぼの首のところまでたまっとっただべ」 
   ふたりとも、ちゃんとは答えられません。  
   そこで、庄屋(しょうや)さんは、  
  「わしが見たところ、千枚(せんまい)はあったが。そんじゃひとつ、おまえさん方のつぼに入れて、きっちり首まで入ったほうが本当の持ち主(もちぬし)、ということになるな。よし、ふたりとも、つぼを取(と)りに帰っておいで」 
   ふたりはさっそく家に帰り、めいめい、つぼをかかえてもどってきました。  
   ところがどうでしょう。 
   吾助(ごさく)のは、なんとも大きなつぼです。  
  「庄屋(しょうや)どん、吾助(ごすけ)のやつは、欲深(よくぶか)じゃて。あんなにでっけえつぼさ、持(も)ってきて」 
  と、得意(とくい)そうに差し出(さしだ)した兵六(ひょうろく)のつぼへ、庄屋(しょうや)さんはお金をザラザラッと入れますと、たちまちお金はあふれて、ザクザクと畳(たたみ)の上へ落(お)ちました。 
   青くなる兵六(ひょうろく)に、庄屋(しょうや)さんは、  
  「兵六(ひょうろく)、金は首のところまでたまっとったんじゃ、なかったかのう」 
   続(つづ)いて吾助(ごすけ)のつぼに入れかえると、ピッタリ首のところまで入りました。  
  「このお金は吾助(ごすけ)のもんじゃ。お金は本当は二干枚(2000まい)あったんじゃがの、干枚(せんまい)と言うたら、うそをついておる者(もの)が、干枚(せんまい)くらい入るつぼをさがして持(も)ってくるじゃろうと、思うたんじゃ。こら兵六(ひょうろく)、悪(わる)いことは、もう二度(にど)とするでないぞ。それから吾助(ごすけ)、こんな大事(だいじ)なもん、もう落(お)とさんように気をつけるのじゃぞ」 
   お金はぶじに、持ち主(もちぬし)の吾助(ごすけ)のところにもどりました。  
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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