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2月29日の日本の昔話
  
  
  
もぐさのききめ
 むかしむかし、ある家に、どろぼうが入りました。
   家の主人のまくらもとを見ると、金箱(かねばこ→金銭・財宝を入れておく箱)がおいてあるので、
  「これは、しめた」
  と、風呂敷(ふろしき)につつんで、逃げだしました。
   主人は、なにやらあやしいけはいに目をさまし、ふと見ると、まくらもとにおいた金箱がありません。
  「やられた!」
   家のまわりをさがしてみましたが、もう、どろぼうの姿はありません。
   トボトボ帰ってくると、庭先の土の上に、足あとが二つありました。
  「ははん、どろぼうの足あとじゃな。よいものを見つけたわい」
   さっそく主人は、両方の足あとに、もぐさをどっさり盛り上げて、火をつけました。
   もぐさは、煙を出して、ジリジリ燃えはじめました。
   するとふしぎなことに、金箱をかついで逃げるどろぼうの足のうらが、だんだんあつくなってきたのです。
  「アチチチチチチチ!」
   足のうらが、火のようにあつくなってきて、走るどころか歩くこともできません。
  「さては、あの家のおやじのしわざか。ええい、くそっ。とんだ家に入ったもんだ」
   どろぼうはころがりながら、ぬすみに入った家ヘひきかえしました。
   もぐさをもやしていた主人は、人のけはいをかんじて、
  「だれじゃ!」
   そばへよって見ると、でっかいひげづらの男が、大きな涙をボロボロこぼしながら、
  「ごかんべんを、どうぞ、かんべんしてください」
   両手で金箱をさし上げて、しきりにあやまるのです。
  「おう、どろぼうどのか。よう、もどられたな」
   主人が金箱を受けとると、もっていたぬり薬をどろぼうにさし出し。
  「やれやれ、あつかったじゃろ。これにこりて、どろぼうはやめることじゃ。・・・おや?」
   主人が言い終わる前に、どろぼうは逃げていきました。
おしまい