
  福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 3月の日本昔話 > にげだしたまつの木
3月16日の日本の昔話
  
  
  
にげだしたまつの木
 むかしむかし、あるところに、いろいろなものにばけては、人とをだましておもしろがっている、わるいタヌキがいました。
   あるあつい日のこと。
   さかなうりの男をみつけたタヌキが、
  「おお、ちょうど腹が空いているときに、さかなうりが。ようし、だましてさかなをとりあげてやろう」
  と、みごとなえだぶりのまつの木にばけました。
   まつの木の日かげをみつけて、
  「ありがたい。ここでひとやすみしていこう」
   さかなうりは、にもつをおろしました。
   でも、このまえにとおったときには、まつの木など、なかったはずです。
  (ははん。これは、いたずらダヌキのしわざだな。よし、からかってやろう)
   さかなうりは、タヌキのばけたまつの木にむかって、
  「たしかこの木は小判(こばん)の木で、木をたたくと小判がふってくるはずだ。それっ、トントン」
   するとタヌキは、全財産(ぜんざいさん)の小判を三まい、さかなうりの頭の上におとしました。
  「よしよし。では、もうひとつ、トントン」
   さかなうりが、ふたたび木をたたきましたが、タヌキはさっき、全財産をつかってしまったので、もう、なにもおとすことができません。
  「・・・しかたない。こんなところか」
   さかなうりは、キセル(→詳細)にタバコをつめて一ぷくすると、そのすいがらを、まつのみきにできているくぼみに、プイッとなげ入れました。
   こうして、二ふく、三ぷく、すいがらをなげ入れていくと、モクモクと、まつの木からけむりがたちのぼってきました。
   タヌキはジッとがまんしていましたが、いつまでもがまんしきれるものではありません。
  「アチッ、アチチチチ・・・」
   まつの木は、みるみる小さくなったかとおもうと、
  「こりゃあたまらん。アチチチチ・・・」
   全財産をとられたうえに、おしりにやけどをしたタヌキは、なきながらどこかへいってしまいました。
おしまい