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        6年生の日本昔話 
          
          
         
金のナスビ 
      
       むかしむかし、ある国の殿(との)さまのもとに、うつくしいおきさきがいました。 
   おきさきはみごもっていましたが、殿(との)さまは、まだ知りません。 
   ある日、おきさきは殿(との)さまのごはんのおぜんを運ぶとちゅう、「プッ」と、小さなおならをしてしまいました。  
  「おまえのようなものは、島流(しまながし)じゃ!」 
   殿(との)さまはおこって、おきさきを、遠くの島へ流してしまいました。  
   島流しにされたおきさきは、男の子をうんでそだて、いつしか十年あまりがたちました。  
   ある日、おきさきは子どもから、  
  「うちにはどうして、おとうさんがおらんの?」 
  と、たずねられて、島流にされたわけを、ありのままにはなしました。 
  「おとうが殿(との)さまだなんて、しらなかった。おら、殿(との)さまにあってくる」 
   男の子は、何か考えでもあるのか、ひとりでふねをこいで海をわたると、お城(しろ)の近くへいって、ナスビのなえを売り歩きました。  
  「金のナスビのなるなえは、いらんかなあ」 
   その声をきいて、殿(との)さまはさっそく、男の子をお城(しろ)によぶよう、けらいにいいつけました。  
  「金のナスビがなるとは、じつにめずらしい。全部買ってもよいが、そのなえは、だれにでもそだてられるのかな?」 
   殿(との)さまが、男の子にたずねると、  
  「だれにでも、というわけではありません。生まれて一度も、おならをしたことのない人がそだてれば、それはみごとな金のナスビができます」 
   男の子の返事に、殿(との)さまは怒(おこ)って、  
  「バカをいうものではない! この世のどこに、一度もへをしないものがおる。いいかげんなものを売り歩くと、ただではおかんぞ!」 
  「おや? 殿(との)さまにうかがいますが、この国ではおならをしても、罪にはならないのですか?」 
   男の子がたずねました。  
  「あたりまえじゃ。そんなことを、いちいち罪にしていたのでは、国がなりたってゆかん」 
  「けれど、わたしの母は、むかし、小さなおならをひとつしただけで、島流にされました。それをもう、おわすれでしょうか?」 
  「なっ、なんじゃと・・・」 
   殿(との)さまはハッとして、男の子をみつめました。  
   よく見ると、目も口もとも、自分にそっくりです。  
  「すると、おまえは、もしや・・・」 
   くわしいわけをきくと、わが子だとわかりました。  
  「わしが悪かった。つらい思いをさせて、すまなかった。すぐに、おくがたを島へむかえにいこう」 
   殿(との)さまはそう言うと、ギュッと、わが子をだきしめました。  
      おしまい         
         
         
        
       
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