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        3年生の日本昔話(にほんむかしばなし) 
          
          
         
ちょうふく山のやまんば 
       むかしむかし、ちょうふく山という山のふもとに、小さな村がありました。 
   このちょうふく山には、おそろしいやまんばが、すんでいるという話です。 
   ある年の十五夜のばん、村のものがお月見をしていると、にわかに空がかきくもり、おそろしげな声がひびきわたりました。  
  「ちょうふく山のやまんばが、子どもをうんだで、もちもってこう! こねば、人もウマも食いころすだどう!」 
   村のものは、ビックリ。  
   みんなで米を出しあって、大あわてでやまんばへの、いわいのもちをつきました。  
   ところが、いざそのもちを、やまんばへとどけることになると、みんなおそろしがって、だれもいこうとしません。  
   どうすべえ、と話あったところ、  
  「そうだ、いつも力じまんばかりしていばっておる、かも安(やす)と権六(げんろく)にいかせるべえ」 
  と、いうことになりました。 
  「だ、だがよ、おれたちゃ、道をしらね。どうやって、もちをとどけりゃいいんだ?」 
   すると、村いちばんの年よりの、大ばんばが進(すす)み出(で)ました。  
  「わしが知っとるで、道あんないするべ」 
   こうなっては、かも安(やす)と権六(げんろく)は、いまさらこわいとはいえません。  
   もちをかかえると、トボトボと大ばんばの後をついて、ちょうふく山ヘとのぼっていきました。  
   山道はだんだん日がくれ、なまあたたかい風がふいてきます。  
  「お、大ばんば、だいじょうぶだか?」 
  「だいじょうぶ、だいじょうぶさ」 
   そのとき、さっと強い風がふきつけ、  
  「もちは、まだだか!」 
  と、ぶきみな声がひびきました。 
  「ひえっ、出たあ!」 
  「た、助(たす)けてくれえ!」 
   かも安(やす)と権六(げんろく)はふるえあがって、たちまちにげだしてしまいました。  
  「ああっ、これ、またんか。・・・やれやれ、わし一人では、もちを運(はこ)べんのになあ」 
   しかたありません。  
   大ばんばは、もちをおいて、やまんばの家をたずねていきました。  
   やまんばは、大ばんばを見ると、うれしそうに笑(わら)いました。  
  「ごくろうじゃな。きのう赤子をうんで、もちが食いとうなったで、その子を使(つか)いに出したんじゃ。して、もちはどこじゃな?」 
   大ばんばは、ビックリです。  
   あのおそろしい声を出したのが、生まれたばかりの赤ん坊(あかんぼう)だったとは。  
  「はい、はい。もってきたども、あんまりおもたいもんで、山のとちゅうにおいてきましただ」 
   これを聞くと、やまんばは赤ん坊(あかんぼう)をふりかえって、いいつけました。  
  「これ、まる。おまえ、ちょっといって、もちをとってこい」 
   すると、まるとよばれた赤ん坊(あかんぼう)は、風のようにとびだすと、おもいもちをかついで、あっというまにもどってきました。  
   さすがは、やまんばの子です。  
   おそろしくなって、大ばんばが帰ろうとすると、やまんばがひきとめました。  
  「せっかくきただ。すこしおらんちの用事(ようじ)をかたづけていってくれろ」 
   大ばんばは、いやともいえず、それから二十一日のあいだ、やまんばの家で、あれこれとはたらいたそうです。  
   やがて、  
  「里ヘ帰りたい」 
  と、やまんばにたのんでみると、 
  「長いこと、ひきとめてすまんかった。それじゃ、みやげにこれをやるべ」 
  と、やまんばは、みごとなにしきの布(ぬの)を大ばんばにくれました。 
  「ほれ、まる。大ばんばを、村まで送(おく)ってやるだよ」 
   いわれたまるは、大ばんばを軽々(かるがる)とかつぎあげると、あっというまに、村に運(はこ)んでいきました。  
   さて、村に帰ってみると、大ばんばは死(し)んだものと、大ばんばのそうしきのさいちゅうでしたから、村のものはビックリ。  
   大ばんばはわけを話して、やまんばがくれたにしきを、村のものに分けてやりました。  
   ところがその布(ぬの)は、いくら使(つか)ってもすこしもへらない、ふしぎなにしきでした。  
   それからというもの、そのにしきはこの村の名物(めいぶつ)となり、みんなしあわせにくらしました。  
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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