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        4年生の日本昔話 
          
          
         
こんにゃくえんま 
       むかしむかし、ある村に、えんま大王をまつったお堂(どう)がありました。 
   えんま大王といえば、地獄(じごく)の王さまです。 
   金色の目をむいて、大きな口をクワーッと開けて、すごい顔でにらんでいます。  
   見ただけでもおそろしいものだから、あまり、おまいりの人もきませんでした。  
   ところがこのえんま堂(どう)に、雨がふっても風が吹(ふ)いても、一日もかかさず、おまいりにくるおばあさんがいました。  
   おばあさんは両方とも目が見えないので、孫(まご)の小さな女の子に、いつも手をひかせてくるのでした。  
   ポカポカとあたたかい、お彼岸(ひがん→春分・秋分の日を中日として、その前後7日間)のある日。  
   おまいりにきたおばあさんは、いつものように、えんまさまの前にすわります。  
   女の子はこわいので、おばあさんのうしろにかくれていました。  
  「なんまいだー。なんまいだー。おじひぶかいえんまさま。どうぞ、あなたさまのお力で、このババの目をなおしてくだされ」 
   おばあさんは、くりかえしくりかえし、えんまさまの前でおじぎをしました。  
   えんま大王も、こうしてまい日まい日おがまれると、声をかけずにいられません。  
  「これ、ババよ。おまえのねがいはきいてとらす。よう信心(しんじん→神仏(しんぶつ)をしんこうすること)してくれたお礼に、わしの片目(かため)をしんぜよう」 
   えんまさまが口をきいたので、おばあさんはビックリして上を向きました。  
   すると、  
  「ありゃ! 見える、見える。あたりがよう見える!」 
   おばあさんの右の目が、パッと開いたのです。  
   おばあさんは、はじめてえんまさまの大きなおすがたを見て、ビックリするやら、よろこぶやら。  
   そのとき、女の子がさけびました。  
  「あっ、えんまさまの目が一つない」 
   ハッと見あげると、えんまさまの目が、一つつぶれています。  
   おばあさんは、ボロボロとなみだを流して、  
  「ああ、もうしわけございませぬ。おまえさまを、かたわ(→不完全(ふかんぜん)なこと)にして、わしが見えるようになるとは。ああ、もったいない、もったいない」 
   すると、片目(かため)のえんまさまがいいました。  
  「まあ、そう心配せんでもいい。わしはおまえたちとちごうて、べつにはたらかなくてはならんということもない。ここに、こうしておるぶんには、片目(かため)でもじゅうぶんじゃ」 
  「へえ、もったいない。ところで、なにかお礼をさせていただきとうございますが」 
  「お礼か。・・・いや、そんなものはいらぬ」 
  「いいえ、そうおっしゃらずにどうぞ。わたしにできますことを、させてくださいまし」 
  「・・・さようか。それでは、こんにゃくをそなえてくれ。わしは、こんにゃくが大すきでな」 
   そういわれたおばあさんは、まい日まい日、えんまさまに、こんにゃくをおそなえしました。  
   そのことが村じゅうのひょうばんになって、えんまさまは、「こんにゃくえんま」と、よばれるようになりました。  
   それからはおまいりの人もふえて、まい月の縁日(えんにち)には、境内(けいだい→社寺のしきち)に、こんにゃくおでんの店が、ズラリとならぶようになったのです。  
   おかげでえんまさまも、すっかり顔つきがかわって、のこった片目(かため)をほそめて、ニッコリ笑(わら)うのでした。  
      おしまい         
         
        
       
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