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7月5日の日本の昔話
  
  
  
  この下に金なし
 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
   きっちょむさんの家には大きな畑がありますが、畑のまん中には、代々大きな石があって、これがきっちょむさんの悩(なや)みの種です。
   どかそうとしても、重いわ大きいわで、どうにもなりません。
  「じゃまな石だな。これがなければ、畑仕事が楽になるのに。・・・そうだ」
   ある日のこと、きっちょむさんは町に出て行くと、会う人ごとに言って回りました。
  「わたしの家は、この前、馬を売って大金を手に入れた。だけど、家においていたら危ないし、どこがにええかくし場所はなかろうか?」
   それを聞いた人はみんなは、
  「あのきっちょむさんのバカが、金をもうけたと言いふらすやつがどこにおる」
  と、大そうあきれ返ったということです。
   さて、それから少したったころ、きっちょむさんの畑の大石のそばに、これまたきみょうな立て札が立ちました。
   それもどういうことか、《この下に金なし》と書かれてあるのです。
  「きっちょむさんはどこまで大バカか、あれじゃあ、金のありかを教えるようなもんじゃで」
  と、村人たちはまたまたあきれ顔。
   一方、きっちょむさんは、二、三日その札をそのままにしておいて、ある日そっとはずしに行きました。
   そうして、あくる朝、畑に出てみたところが、どうでしょう。
   あの大石のそばに、とても大きな深い穴がほられているではありませんか。
   誰かが、この下に金があると思って、一生けんめいほったのでしょう。
   そこできっちょむさんが、えい! とばかりに大石を押したところが、石はゴロンところげて、うまい具合にその穴の中に入ってしまいました。
   そうして上から土をかぶせたところ、とても立派な畑に早変わりしたのです。
おしまい