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        4年生の日本昔話 
          
          
         
カッパの雨ごい 
      
       むかしむかし、森にかこまれた、小さな村がありました。 
   その森の中に、古いぬまがあって、一ぴきのカッパがすんでいました。 
   このカッパは、ひどいいたずらもので、畑をあらしたり、ぬまへ人をひきずりこんだりのわるさをするので、村の人たちは、たいそうこまっていました。  
   ある日のこと、この村にやってきた旅の坊(ぼう)さんが、いたずらカッパの話を聞きました。  
   坊(ぼう)さんはさっそくぬまへいって、カッパをよびだしていいました。  
  「おめえさんは、わるいことばかりしとるようじゃが、いったい、なにが気に入らんで、そんなことをするんじゃあ? うん?」 
   するとカッパは、こんなことを話しはじめました。  
  「わしはなあ、カッパの身の上がつらいんよ。こんなすがたでは、人間のなかまには入れてもらえず、そうかといって、魚やカメのなかまでもねえ。おもしろくねえ。だからおら、ときどきむちゃくちゃあばれまわっとるのよ」 
   話しているうちに、カッパは悲しくなってきました。  
  「お坊(ぼう)さま、人間に生まれかわるには、どうしたらいいだ?」 
  「それはのう、おまえが生きているあいだに、なにか人のためになることをすることだ」 
  「そうか、わかった」 
   カッパは坊(ぼう)さんに礼を言うと、帰っていきました。  
   その年の、夏のことです。  
   村は何日も何日も日でりがつづいて、作物はかれるし、いどの水もなくなってしまうしで、村人たちは、毎日毎日広場に集まって、朝からばんまで空に向かって雨ごいをしました。  
   うらない師(し)のおばあさんも、雨がふるようにいのりつづけました。  
  「雨をふらせてたもれ、雨をふらせてたもれ!」 
   そのころ、あのぬまのカッパが、村の中へ入ってきました。  
  「カッパじゃ、やっつけろ!」 
   村人たちは、カッパをとりかこんでおそいかかりました。  
   日ごろのうらみをはらそうと、なぐったりけったりです。  
   だけど、カッパはおとなしく、されるままです。  
   そして、いまにも死にそうなようすでやっと顔を上げると、雨ごいをさせてくれとたのみました。  
   村人たちは、またカッパがいたずらでもするのかと思いましたが、このひどい日でりに、わらをもつかむ思いで、カッパをしばったまま、広場のやぐらの上につれていきました。  
   カッパはしばられたまま、やっとのことで体をおこし、天をあおいでいのりはじめました。  
  「神さま、おら、いままでわるいことばかりして、村の衆(しゅう)にめいわくをかけてきた。だから、おらの命とひきかえに、村に雨をふらせてはくださらんか。どうか、おねげえですだ」 
   カッパの雨ごいは、何日も何日もつづきました。  
   そのあいだ、カッパは水も飲まなければ、食べものも食べません。  
   カッパのいのりの声は、苦しそうに、とぎれとぎれになっています。  
  「神さま・・・、おねげえです・・・だ。雨をふらせて・・・けろ・・・」 
   カッパのいのりが、あんまり熱心(ねっしん)なので、いつのまにか、村じゅうの人たちも、いっしょになっていのりはじめました。  
   すると、ふしぎなことに、空には急に雨ぐもがたちこめて、大つぶの雨がポツリ、ポツリ。  
   とうとう、ザーザーと、雨がふってきました。  
   雨はみるみるはげしくなり、やがて、たきのようにふりだしました。  
  「カッパの雨ごいが、天にとどいたぞ!」 
   カッパは、天をあおぐと、  
  「・・・神さま、ありがとう」 
   はげしい雨に打たれながら、まんぞくそうな顔で死んでしまいました。  
   それからしばらくして、旅の坊(ぼう)さんがまたこの村をおとずれて、このことを知りました。  
   坊(ぼう)さんは、人間になりたがっていたカッパの話をして、  
  「命がけでつみほろぼしをしたんじゃもの。いつか人間に生まれかわって、この村にくるかもしれんなあ」 
   村人たちは、ぬまの近くに小さなカッパのはかを立て、いつまでもカッパの雨ごいの話を語りつたえたそうです。  
      おしまい         
         
        
       
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