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7月15日の日本の昔話
  
  
  
  そら豆の黒い筋
 むかしむかし、おばあさんがそら豆を煮(に)ようと思いました。
   なべに入れるとき、そら豆が一粒はずんで落ちて、コロコロコロと、庭のすみへころがっていきました。
   おばあさんが、たきつけのワラを持ってくると、風がサーッと吹いてきて、ワラを一本、庭のすみへ飛ばしました。
   おばあさんが、火をたきつけて仕事をしていると、まっ赤になった炭が一つ下へ落ちて、カランカランカランと、これも庭のすみっこへころがっていきました。
   庭のすみっこで、そら豆とワラと炭が、顔をあわせました。
   そら豆がいいました。
  「ワラさん、炭さん、わたしたちが、ここで出会ったのも何かのえん、これからひとつ、お伊勢参り(おいせまいり)にいきませんか?」
  「そりゃ、いいね」
  「うんうん、さっそく出かけよう」
  と、いうことになって、そら豆とワラと炭は、そろって出かけました。
   みんなは川の所まできましたが、この川には橋がありません。
   橋がなければ、川を渡れません。
   すると、ワラがいいました。
  「わたしが橋になるよ。そら豆さん、炭さん、渡りなさい」
  「それは、ありがたい」
   そら豆が渡ろうとすると、炭がおこって、
  「わたしが先に渡る。そら豆さんはあとにしろ!」
   そら豆は、ムッとして、
  「いや、わたしが先だよ!」
  「なに、わたしが先だ!」
   炭は、そら豆をポンとつき飛ばして、先にワラの橋をわたりかけました。
   ところが半分まで渡ったとき、川の流れを見たものだから、急にこわくなって動けません。
  「炭さんどうした? 早く渡れよ」
   そら豆がせきたてても、炭はこわくて動けません。
   そのうちに、炭のねつでワラが燃えだして、炭とワラはボチャンと川に落ちてしまいました。
   それを見て、そら豆は大笑いです。
  「アハハハハハッ、わたしをつき飛ばして先にわたったからだよ。アハハハハハッ、アハハハハハッ・・・」
   あんまり笑いすぎたので、そら豆のおなかは、パチンと、はじけてしまいました。
  「あっ! ・・・こまったな。こんなかっこうじゃ、みっともなくて、どこへもいけないよ。どうしょう」
   そら豆が泣いていると、仕立屋(したてや)さんが通りかかりました。
  「おやおや、どうしたね、そら豆さん」
  「あんまり笑いすぎて、おなかが破けたんだよ」
  「そりゃ、気のどくに。どれどれ、わたしは仕立屋(したてや→さいほう屋)だ。やぶけたおなかをぬってあげよう」
  「よろしく頼みます」
   そこで、仕立屋は針と糸を取り出して、そら豆のおなかを、チクチクチク、チクチクチクと、ぬいました。
   ところが、あいにくミドリ色の糸をきらしていたので、黒い糸でぬったのです。
   そら豆に黒い筋ができたのは、そのときからだそうです。
おしまい