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        5年生の日本昔話 
          
          
         
山の中のネコの家 
       むかしむかし、あるネコ好きのおばあさんが、一匹(1ぴき)の三毛ネコを手に入れました。 
   ネコは年を取って、しっぽの先が分かれるようになると、化けるというので、おばあさんは三年ごとに区切って飼(か)うことにしました。 
   初めの三年間がアッというまに過(す)ぎ、三毛ネコはすっかりおばあさんになつきました。  
   そこで、また三年間飼(か)うことにして、自分の子どものようにかわいがりました。  
   六年たっても、まだしっぽの先が分かれていないので、もう三年間飼(か)うことにしました。  
   九年も過(す)ぎると、さすがにネコも元気がなくなり、しっぽの先が分かれはじめます。  
   そこで、おばあさんもやっとあきらめ、ネコを手ばなすことにしました。  
  「ようがんばった。困(こま)ったことがあれば、いつでももどっておいで」 
   おばあさんは、ネコのために赤飯をたいて食べさせ、にぼしのつつみを首にかけてやりました。  
   家を出たネコは、名ごりおしそうに何度もふり返っていましたが、やがて姿(すがた)を消しました。  
   それからというもの、おばあさんは、さみしくてしかたがありません。  
   別れたネコのことを思うと、新しいネコを飼(か)う気がおきません。  
   何年か過(す)ぎたころ、おばあさんは一人で、お遍路(おへんろ→空海という、有名なお坊(ぼう)さんが修行(しゅぎょう)した、四国の八十八箇所(88かしょ)を巡(めぐ)る旅)の旅に出ました。  
   ところがある日、山でまよってしまい、帰り道がわからなくなったのです。  
   行けども行けども、深い森で、ついに道もなくなりました。  
   そのうちに、あたりがだんだん暗くなり、動くこともできません。  
  (こまったことになった) 
   おばあさんは、どっとつかれが出て、おなかがすいてきました。  
   でも、食べるものはありません。  
  (このまま、ここでのたれ死にするのか) 
   そう思うと、くやしいやら、なさけないやら。  
   だからといって、いまさらジタバタしても始まりません。  
   おばあさんはあきらめ、ドカッと腰(こし)をおろしました。  
   するとその時、向こうに小さな明かりが見えたのです。  
  (こんな山の中に、どうして家が) 
   ふしぎに思いましたが、とにかく明かりの方へ行くことにしました。  
   近づいて行くと、一人の女の人が、風呂場(ふろば)のかまどにまきをくべています。  
   おばあさんは、その女のそばへ行き、  
  「道にまよって困(こま)っている。今夜ひと晩(ばん)泊(と)めてもらえぬか」 
  と、いいました。 
   女は顔をあげたとたん、うれしそうにさけびます。  
  「あら、まあ! これは、なつかしい。おばあさん。わたしは、おばあさんの家にいた三毛ネコです」 
  「なに、おまえが、あの三毛ネコだって」 
   おばあさんが、よくよく女の顔を見たら、なんと、自分のかわいがっていたネコではありませんか。  
  「ほんとだ。どこへ行ったのかと心配していたが、無事でなによりじゃ。ところで、この家にはだれが住んでいる?」 
   おばあさんがたずねたら、ネコは急にまじめな顔になり、  
  「ここは、恐(おそ)ろしいネコの家で、年をとってしっぽの先が分かれるようになると、みんなここへやってくるのです。どのネコも化けることができ、人間を見つけると、すぐに食い殺してしまいます。せっかく会えたのにざんねんですが、みんながもどらないうちに、早く逃(に)げてください」 
  と、言いました。 
  「なんと・・・」 
   おばあさんは、青くなってふるえだしました。  
  「でも、おばあさんはわたしをとてもかわいがってくれました。だから、なんとか助けたいのです。わたしが案内しますから、ついてきてください」 
   そう言っているうちにも、  
  「ニャーオン、ニャーオン」 
  と、ぶきみなネコの鳴き声が近づいてきました。 
  「ささっ、急いで!」 
   ネコはおばあさんの手をとると、鳴き声とは反対の方へかけだします。  
   しばらく行くと、大きな竹やぶの前に出ました。  
   すると、ネコが立ちどまって言いました。  
  「この竹やぶをくぐると、すぐ向こうに道があります。その道をおりて行けば、下の村へ出られます」 
  「ありがとう」 
   おばあさんはお礼を言って、竹やぶにとびこみました。  
   竹やぶの向こうに道があって、おばあさんは無事に下の村までたどりつくことができたそうです。  
      おしまい         
         
        
       
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