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        5年生の日本昔話 
          
          
         
うたうがいこつ 
      
       むかしむかし、びんぼうなある村に、六べえ(ろくべえ)と、九べえ(きゅうべえ)というわかものがいました。 
   ともだちどうしのふたりは、ある日、 
  「こんな村では、くらしがたたん。町へいってはたらこう」 
  と、村をあとにしました。 
   それから三ねん。  
   六べえはせっせとはたらいて、お金のたくわえもできましたが、九べえはあそんでばかりで、いつも一文なしです。  
   そんなあるとき、九べえのおかあさんがびょうきだという、しらせがありました。  
   九べえが、六べえにわけをはなすと、  
  「おれは村にもどって百姓(ひゃくしょう)をする。いっしょにかえろう。おまえさんは、おっかさんのみまいにお金がいるだろうから、一両(七万円ほど)をかしてやろう」 
   六べえが、さいふから小判(こばん)をとりだしました。  
   さいふにはまだ小判(こばん)が、いくまいも入っています。  
   九べえはそれを見ると、ニヤリとわらいました。  
   あくる日、六べえと九べえは、いっしょに村へむかいました。  
   そして、とちゅうのとうげにきたときです。  
   九べえはいきなり、六べえを刀でさしころして、ふところのお金をうばいとり、なにくわぬかおで村にもどると、  
  「六ベえは酒ばかりのんでいて、すっかり人がかわってしまった。はずかしくて、村のみんなにあわせる顔がないらしい」 
  と、六べえのわるくちをいいふらしました。 
   九べえは、おかあさんのかんぴょうをしながら、ブラブラとあそんでいましたが、そのうちに、おかあさんは死んでしまうし、お金もなくなって、もとの一文なしです。  
   しかたなく、また町へいって、はたらくことにしました。  
   九べえがとうげをこえていくと、どこからか、うたごえがきこえてきました。  
  ♪ねがいかなって、めでたやめでた。 
  ♪すえはつるかめ、五葉の松。 
  ♪ほーいほい、ほーいほい。 
   だれがうたっているのかと、よくみれば、なんと、木のえだにひっかかったしゃれこうべ(頭がいこつ)が、口をパクパクやっているのです。  
  「ほう。うたうがいこつとは、めずらしい。町でみせものにして、金もうけをしよう」 
   九べえが、しゃれこうべをつかって、町でみせもの小屋のしょうばいをしたところ、すごいにんきです。  
   びょうばんをきいた、殿(との)さまも、  
  「しゃれこうべのうたを、ぜひきいてみたい。九べえとやらを、城(しろ)によべ」 
  と、けらいにいいつけました。 
   けらいの話をきいて、九べえはニンマリ。  
  「こいつは、うんがむいてきた。いったい、どんなほうびがもらえることやら」 
   九べえは城(しろ)へいくと、殿(との)さまの前でしゃれこうべをとりだして、  
  「さあ、いつものうたを、きかせてくれよ」 
  と、いいましたが、しゃれこうべは口をむすんだきり、うんともすんともいいません。 
  「これ、どうした。お殿(との)さまのまえだぞ」 
   しゃれこうべは、いっこうにうたいません。  
   殿(との)さまはおこって、けらいにめいじました。  
  「その男をしばりあげて、くびをはねい!」 
   すると、しゃれこうべが、はじめて口をひらいて、  
  「殿(との)さま、ありがとうございます。じぶんは、九べえにころされた六べえです。むねんをはらそうと、この日をまっておりました」 
  と、いってから、ほれぼれするこえでうたいました。 
  ♪ねがいかなって、めでたやめでた 
  ♪すえはつるかめ、五葉の松 
  ♪ほーいほい、ほーいほい 
      おしまい         
         
        
       
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