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        4年生の日本昔話 
          
          
         
白米城(はくまいじょう) 
      
       むかしむかし、山の上に、小さなお城(しろ)がありました。 
   とつぜん、となりの国から攻(せ)められているさいちゅうです。 
   お城(しろ)の、殿(との)さまは、  
  (こちらもなんぎじゃが、となりの国の軍勢(ぐんぜい)も、ながい城(しろ)攻(ぜ)めで、さぞつかれておろう。いまひといきがんばれば、攻め手(せめて)もあきらめて、かこみをとくやもしれぬ) 
  と、思っていたところヘ、ひとりの家来がかけつけてきて言いました。 
  「お殿(との)さま、たいヘんでございます。お城(しろ)の水が、なくなってしまいました」 
  「なに、水がない!」 
   知らせをきいて、殿(との)さまは、サッと顔色をかえました。  
  「米のたくわえは十分なのじゃが、水がなくては、どうにもならん。いよいよ、おしまいか」 
   そばの大将(たいしょう)のひとりが、いいました。  
  「お殿(との)さま。このうえは、みなみな討死(うちじに)と覚悟(かくご)をきめ、すぐさま、敵(てき)の中ヘうってでることにいたしましょう」 
  「・・・それしか、あるまい」 
   殿(との)さまのゆるしをうけた大将(たいしょう)が、さいごの合戦(かっせん)を味方の兵(へい)に知らせようと、本丸(ほんまる→城(しろ)の中心)から下ヘおりてきたとき、百姓(ひゃくしょう)あがりのウマひきの男が、ヒョコリとあらわれて、 
  「だんなさま。死ぬこた、いつだってできますだよ。それよりも、わしに考えがありますで」 
  と、なにかを大将(たいしょう)の耳にささやきました。 
   すると、大将(たいしょう)は、  
  「よし、ものはためしということもある。みなのもの、城(しろ)にある米を、のこらず集めよ」 
   城(しろ)じゅうから集めた米が、のこらずウマを洗(あら)う大きなたらいの中に入れられました。  
   白い米の入った大きなたらいを、城(しろ)の中から持ちだすと、そとにはウマが何匹(なんびき)も待っています。  
   そこは、南をむいた日あたりのいいところで、敵(てき)の陣地(じんち)からは、いちばんよく見えるところです。  
   そして、ウマの世話をする家来たちが、たらいの中から、手おけで白米をすくうと、ザーッ、ザーッと、ウマの背中(せなか)にも横っ腹(よこっぱら)にも尻(しり)にもかけて、ウマを洗(あら)うふりをしました。  
   このようすを遠くから見ていた敵(てき)は、おどろいたのなんの。  
  「水がなくなって、もうそろそろ降参(こうさん)してくると思っておった。それなのに、あのように、おしげもなく水をつかってウマを洗(あら)うとは。こちらのたくわえも、のこりわずか。・・・しかたない、ひきあげよう」 
   敵(てき)は自分たちの国ヘ、ひきあげていったそうです。  
   敵(てき)の陣地(じんち)から見ると、ウマにふりかける米が、お日さまにキラキラひかって、ちょうど水に見えたのです。  
   このことがあってから、だれいうことなく、この小さな山城(やましろ)のことを、白米城(はくまいじょう)とよぶことになったということです。  
      おしまい         
         
        
       
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