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        5年生の日本昔話 
          
          
         
一袋(ひとふくろ)の米 
       あるとき、お城(しろ)につかえる曽呂利(そろり)さんが、秀吉公(ひでよしこう→豊臣秀吉(とよとみひでよし))にこんなお願いをしました。 
  「私(わたし)の町は、まずしい人が多く、みんな毎日食べるものに困(こま)っています。そこで、殿(との)さまのおなさけをもちまして、紙袋一(かみぶくろ1)ぱいほどの米を分けてやりたいと思います。どうぞ、お許(ゆる)しくださるよう、お願いいたします」 
   こんなことを、まじめくさって、ていねいにたのむので、秀吉公(ひでよしこう)は、へんだなとは思いましたが、  
  「なんじゃ、それっぽっちのことか。つまらんことを聞くな。お前のすきなようにせい」 
  「あのう、それが大きなふくろでして」 
  「たかが、紙の袋(ふくろ)じゃ。すきなだけもたせてやれ」 
  「さすがはおなさけ深いお殿(との)さまでございます。町のものも、さぞかし喜ぶことでしよう」 
   曽呂利はペコぺコおじぎをして、秀吉公(ひでよしこう)の書付(かきつけ→江戸時代(えどじだい)、将軍(しょうぐん)の命令を伝えた文書)をおしいただいて、お城(しろ)をさがりました。  
   それから、十日ほどたったある日のことです。  
  「殿(との)さま、大変でございます」 
   家来が、秀吉公(ひでよしこう)のところへかけつけてきました。 
  「いかがいたした」 
  「ちょっと、町のようすを、・・・ああ、あれです」 
   秀吉公(ひでよしこう)の米倉の中の一つに、それはすごく大きな紙の袋(ふくろ)がすっぽりかぶさっています。  
   そして大勢(おおぜい)の町人が、米倉から、どんどんお米を運び出しているのです。  
   おどろいた役人が、これを止めようとすると、あの曽呂利が殿(との)さまの書付をみせて、役人を下がらせます。  
  「殿(との)さま、あのとおりです」 
  「ううむ・・・」 
  「あのぶんですと、かなりたくさんの米が出ていってしまいます。何がなんだかわからず、せっしゃ、みるにみかねてお知らせにあがりました」 
  「ふむ、ふむ、なるほど。うひゃはははは、これはけっさく。おもしろいわい」 
  「殿(との)さま、笑っている場合ではございません。早く、止めてくださいますよう」 
  「まあ、よいではないか」 
  「しかし、あんなにどっさりのお米を」 
  「よいよい。わしもあいつと約束したのだし、何かわけがあるにちがいない。すてておけ。・・・それにしても曽呂利のやつ、でっかい袋(ふくろ)を作ったもんじゃ。うひゃははははは」 
   つぎの朝、曽呂利がお城(しろ)にやって来ました。  
  「殿(との)さま、昨日はありがとうございました」 
  「よい、れいにはおよばん。それにしても、すごい袋(ふくろ)をつくったものだ」 
  「はい。あれだけで十日ほどもかかりました。いただきました米は、荷車で百二十台分ございました。お約束通り、町のまずしい人達に、『これは、おなさけ深い殿(との)さまからのお米だ』といって、分けてやりました。みんな、涙(なみだ)を流して喜こんでくれました。殿(との)さま、曽呂利からも、あつくお礼申し上げます」 
  「でかした。さすがは曽呂利じゃ。・・・じゃが、今回だけでかんべんしてくれよ。うひゃははははは」 
      おしまい         
         
        
       
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