4年生の日本昔話 
          
          
イラスト Hio 
         
天の羽衣(はごろも) 
     
    ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
    
     
    投稿者 「あーる」  【眠れる朗読】 
      
       むかしむかし、山のすその村に、いかとみという、狩人(かりゅうど)が住んでいました。 
   よく晴れた、春の朝のことです。 
   いかとみは、いつものように、けものをさがしに山を登っていきました。  
        
              「いい朝だなあ」 
         いかとみが空を見上げると、さっきまですみきっていた青空に、いつの間にか白いかすみのようなものが、いくえにもたなびいています。  
         見つめていると、ふしぎなことに、かすみはフワフワと空をとんでいるのです。  
        「あっ、あれは白鳥か。八羽もいるぞ」 
         いかとみは、いそいで湖に近寄(ちかよ)りました。  
        
               すると、湖で泳いでいるのは白鳥ではなく、今まで見たこともないほど美しい、八人の乙女(おとめ)たちだったのです。  
         いかとみがふと、あたりを見回すと、少しはなれた松(まつ)の枝(えだ)に、まっ白い布(ぬの)が、かけてあります。  
        
              「なんてきれいな着物だろう。これはきっと、天女(てんにょ)の着る羽衣(はごろも)にちがいない。 持って帰って家宝(かほう)にしよう」 
         いかとみは、そのうちの一枚(いちまい)を、ふところにしまいました。  
        
               やがて、水浴(みずあ)びをしていた天女たちが、水からあがると、羽衣(はごろも)を身につけて空に舞い上(まいあ)がっていきました。  
         でも、1人の天女だけが、その場に取り残(のこ)されてしまいました。  
         いかとみが、彼女(かのじょ)の羽衣(はごろも)を取ってしまったため、天に帰れないのです。  
         シクシク泣(な)きくずれる天女の姿(すがた)に、心を痛(いた)めたいかとみは、天女に羽衣(はごろも)をさし出しました。  
        
              「まあ、うれしい。ありがとうございます」 
         ニッコリほほえむ天女に、すっかり心をうばわれたいかとみは、羽衣(はごろも)を返すのを止めました。  
        「この羽衣(はごろも)は返せません。それよりも、わたしの妻(つま)になってください」 
         天女は何度も返して欲(ほ)しいと頼(たの)みましたが、いかとみは返そうとしません。  
         しかたなく、天女はいかとみの妻(つま)になりました。  
        
               そして、三年が過(す)ぎました。  
         いかとみと天女は、仲良(なかよ)く暮(く)らしていましたが、天女はいつも、天にある自分たちの世界に帰りたいと思っていました。  
        
               ある日、いかとみが狩(か)りに出かけたときのこと、天女は家のそうじをしていました。  
         そして、天井裏(てんじょううら)に、黒い紙づつみがあるのに気づきました。  
         その紙づつみを開けてみますと、あの羽衣(はごろも)が入っていました。  
        「・・・どうしよう?」 
         天女は、なやみました。  
         天女は、いかとみと暮(く)らすうちに、いかとみの事が好(す)きになっていたのです。  
         でも、天の世界に帰りたい。  
         このまま、いかとみの妻(つま)として、地上で暮(く)らすか、それとも天の世界に帰るか。  
         さんざんなやみましたが、天女は帰ることにしました。  
        
               そのころ、いかとみは、獲物(えもの)をたくさんつかまえたので、その獲物(えもの)を町で売って、天女のために、きれいなクシを買って帰る途中(とちゅう)でした。  
         ふと空を見上げると、 
        
       いかとみの妻(つま)の天女が、天に帰る姿(すがた)が見えました。  
        「あっ、まっ、まさか! おーい、待ってくれー!」 
         いかとみは、力の限(かぎ)り天女を追いかけましたが、そのうち、天女の姿(すがた)は見えなくなってしまいました。  
      おしまい         
         
        
       
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