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        3年生の日本昔話(にほんむかしばなし) 
          
          
         
たのきゅう 
       
      
       
      
       むかしむかし、あるところに、たのきゅうという、旅(たび)の役者(やくしゃ)がいました。 
   おかあさんが病気(びょうき)だという手紙がきたので、大急(おおいそ)ぎで、もどるとちゅうです。 
   ところが、ある山のふもとまでくると、日が暮(く)れてしまいました。  
   でも、たのきゅうは親孝行者(おやこうこうもの)だったので、早くおかあさんに会いたいと、そのまま山を登(のぼ)りかけました。  
   すると、茶店のおばあさんが、たのきゅうにいいました。  
  「およしなさい。この山には大きなヘビがいるから、夜はあぶないよ」 
   でもたのきゅうは、病気(びょうき)のおかあさんが心配(しんぱい)なので、山へ登(のぼ)っていきました。  
   そして、峠(とうげ)でひと休みしていると、しらがのおじいさんが出てきていいました。  
  「おまえさんは、だれだ?」 
  「わしは、たのきゅうというもんじゃ」 
  と、たのきゅうは答えました。 
   だけど、おじいさんは「たのきゅう」を「たぬき」と聞きまちがえました。  
  「たぬきか。たぬきなら、化(ば)けるのがうまいだろ。さあ、化(ば)けてみろ。わしは大ヘビだ。わしも化(ば)けているんだ」 
   大ヘビと聞いて、たのきゅうはビックリ。  
  「さあ、はやく化(ば)けてみろ。それとも、化(ば)けるのが、へたなのか?」 
   ブルブルとふるえていたたのきゅうですが、大ヘビにへたと言われて、役者(やくしゃ)だましいに火がつきました。  
  「まっていろ。いま、人間の女に化(ば)けてやる」 
   たのきゅうは、にもつの中から取(と)り出(だ)した女のかつらと着物(きもの)を着(き)て、おどって見せました。  
  「ほほう、思ったより、じょうずじゃ」 
  と、おじいさんは、感心(かんしん)しました。 
   そして、  
  「ときに、おまえのきらいな物(もの)は、なんじゃ?」 
  と、聞きました。 
  「わしのきらいなのは、お金だ。あんたのきらいな物(もの)は、なんだね?」 
   たのきゅうも、たずねました。  
  「わしのきらいな物(もの)は、タバコのヤニとカキのシブだ。これをからだにつけられたら、しびれてしまう。おまえは、たぬきだからたすけてやるが、このことはけっして、人間にいってはならんぞ。じゃ、今夜はこれで別(わか)れよう」 
   そういったかと思うと、おじいさんの姿(すがた)は、見えなくなってしまいました。  
   たのきゅうは、ホッとして山をおりました。  
   ふもとに着(つ)くと、ちょうど夜が明けました。  
   たのきゅうは、村の人たちに、大ヘビから聞いた話をしました。  
  「と、いうわけだから、タバコのヤニとカキのシブを集(あつ)めて、大ヘビのほら穴(あな)に投げ込(なげこ)むといい。そうすれば、大ヘビを退治(たいじ)できて、安心(あんしん)して暮(く)らせるというもんじゃ」 
   それを聞いて、村の人たちは大喜(おおよろこ)びです。  
   タバコのヤニとカキのシブを、できるだけたくさん集(あつ)めて、大ヘビのほら穴(あな)に投(な)げこみました。  
  「うひゃー、こりゃあ、たまらねえ!」 
   大ヘビは死(し)にものぐるいで、となりの山に逃げ出(にげだ)して、なんとか命(いのち)だけは助(たす)かりました。  
  「こりゃあ、きっと、あのたぬきのやつが、わしのきらいな物(もの)を人間どもにしゃベったにちがいない。おのれ、たぬきめ! どうするか覚(おぼ)えてろ!」 
   大ヘビは、カンカンになっておこりました。  
   そして、たのきゅうがいちばんきらいな物(もの)は、お金だということを思い出しました。  
   そこで大ヘビは、できるだけたくさんのお金を集(あつ)めて、たのきゅうの家をさがして歩きました。  
   そしてやっと、たのきゅうの家をさがしあてましたが、戸がピッタリしまっていて、中に入れません。  
  「さて、どうやって入ろうか? ・・・うん?」 
   そのとき、大ヘビは、屋根(やね)にある、けむり出し口を見つけました。  
  「それえっ、たぬきめ、思い知れっ!」 
   大ヘビは、けむり出し口からお金を投(な)げこんでいきました。  
   おかげで、たのきゅうは大金持(おおがねも)ちになり、おかあさんの病気(びょうき)もなおって、しあわせに暮(く)らしました。  
      おしまい         
         
         
        
       
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