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        3年生の日本昔話(にほんむかしばなし) 
          
          
         
おとりのキジ 
      
       むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。 
   きっちょむさんの村には、カラスがたくさんいました。 
   畑(はたけ)はあらされるし、朝から晩(ばん)まで、カァー、カァーとうるさいし、まったくこまったものです。  
  「よし、わたしがつかまえてやろう」 
   きっちょむさんが、ワナをつくってしかけると、うまいことに、二十羽あまりのカラスがとれました。  
  「さて、このカラスをどうしようか?」 
   カラスは、ほかの鳥とちがって、たべてもおいしくありません。  
   かといって、このまますててしまうのも、もったいないし。  
  「そうだ。町へもっていって、売ってこよう」 
   きっちょむさんは、カゴにカラスを入れると、なにを考えたのか、カゴのふたの上に、キジを一羽のせてでかけました。  
  「ええー、カラスはいらんかな。カラスの大やすうりだよ。一羽がたったの十文(三百円ほど)。カラスはいらんかな」 
   きっちょむさんの売り声に、町の人たちはおどろきました。  
  「おい、みろ。カラス、カラスといっているが、カゴにつけているのは、キジではないか」 
  「なるほど、キジにまちがいない。あの男、よほどいなかもんとみえる。きっと、カラスとキジのくべつがつかんのだ。キジが一羽、たったの十文なら、やすい買(か)い物(もの)だ。おーい、一羽くれ」 
  「わしにも、そのキジ・・・、いや、カラスをくれ」 
  「わしにもだ」 
   町の人たちがよってくると、きっちょむさんは十文ずつもらっておいて、カゴに入ったカラスをわたしていきました。  
  「なんだ、これはカラスではないか?」 
   町の人たちは、文句(もんく)を言いましたが、  
  「だから、わしはちゃんとはじめから、『カラスはいらんかな』と、いったではないか。いくらいなかもんでも、カラスとキジのちがいくらい、三つの子どもでもしっておりますわい」 
   きっちょむさんは大金をかせいで、ホクホク顔でかえっていきました。  
      おしまい         
         
         
        
       
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