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        5年生の日本昔話 
          
          
         
お坊(ぼう)さんの贈り物(おくりもの) 
      
       むかしむかし、空海(くうかい)という名の、旅をしながら村から村へと歩く、お坊(ぼう)さんがいました。 
   ある冬の日、宿(やど)が見つからないうちに夜が来ました。 
  「どこかに、とめてくれる家はないかな?」 
   でも、きたないお坊(ぼう)さんの姿(すがた)を見て、とめてくれる家はありませんでした。  
   とうとう、雪がふってきました。  
   村はずれまで来ると、一軒(1けん)のまずしい家がありました。  
  「雪にふられて困(こま)っている。今夜、ひと晩(ばん)とめてくだされ」 
   すると中から、おばあさんが出てきて。  
  「あれまあ、お気の毒に。こんなところでよかったら、さあ、どうぞ」 
   おばあさんは、お坊(ぼう)さんをいろりのふちに座(すわ)らせ、おわんにお湯を入れてあげました。  
  「食べる物もなくてのう。せめて、お湯でも飲んでください。からだがあったまりますから」 
   お坊(ぼう)さんは、両手でおわんをかかえるようにしてお湯を飲みました。  
   冷えきったからだが、どんどんあったかくなってきます。  
  「ありがとう。まるで、生き返ったようだ」 
   お坊(ぼう)さんが礼を言うと、  
  「あしたの朝は、きっとなにか作りますから」 
   おばあさんが、申しわけなさそうに頭をさげました。  
   するとお坊(ぼう)さんは、ふところから米を三粒(3つぶ)ほど出して、  
  「すまんが、これでおかゆを煮(に)てくれ」 
  と、いいました。 
  「へええ、これでおかゆを・・・」 
   おばあさんはビックリしましたが、言われたように、なべに三粒(3つぶ)の米を落とし、それにたっぷりとお湯を入れ、いろりの上にのせました。  
   すると、どうでしょう。  
   なべの中には、たちまちおいしいおかゆがあふれ、グツグツと煮(に)えはじめたのです。  
  「さあ、おばあさんもいっしょに食ベなされ」 
   そのおかゆのおいしいこと。  
   こんなにおいしいおかゆを食べたのは、生まれてはじめてです  
  「はあ、ありがたや、ありがたや」 
   おばあさんは、涙(なみだ)を流して喜びました。  
   そしてふしぎなことに、おかゆはいくら食ベても、ちっともなくなりません。  
  「ありがとうございました。きたないふとんですが、ここでやすんでください」 
   おばあさんは、たった一組しかないふとんにお坊(ぼう)さんをねかせて、自分はわらにもぐってねました。  
   つぎの朝。  
   お坊(ぼう)さんは、おばあさんがねているうちに起き出し、また、ふところから米を三粒(3つぶ)ほど出して、からっぽの米びつの中ヘ落としました。  
  「しんせつなおばあさん、いつまでも元気でいておくれ」 
   そういって家を出ようとしたら、おばあさんがあわてて起きてきて、  
  「お坊(ぼう)さん、待ってください。いも汁(しる)でもつくりますから」 
  「ありがとう。でも、わたしはもう出かけなくてはいけない。あとで、米びつをあけるがよい」 
   お坊(ぼう)さんはそう言うと、おばあさんの家を出ていきました。  
  「また、きてください」 
   おばあさんは、雪の中のお坊(ぼう)さんに向かって、そっと手を合わせました。  
  「そういえば、米びつをあけろと、言っていたが」 
   おばあさんが米びつをあけてみますと、なんと、中には米がびっしりつまっているではありませんか。  
   そればかりか、ふしぎなことに、毎日食べても米はなくなりません。  
   この米のおかげで、おばあさんはいつまでも元気に暮(く)らしたそうです。  
      おしまい         
         
        
       
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