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        3年生の日本昔話(にほんむかしばなし) 
          
          
         
石のいも 
      
       むかしむかし、ある村に、空海(くうかい)という名の、お坊(ぼう)さんがやってきました。 
   お坊(ぼう)さんは、朝から何も食べずに、山をこえ、谷を渡(わた)り、やっとこの村にたどりついたのです。 
  「ああ、腹(はら)がへった。目が回りそうじゃ」 
   すると向(む)こうから、一人の女の人が歩いてきました。 
   女の人は、畑(はたけ)から帰ってきたところでした。 
   手にザルをかかえ、その中にはおいしそうなイモが、いっぱい入っていました。 
   それを見て、お坊(ぼう)さんは思わず声をかけました。 
  「お願(ねが)いじゃ、そのザルの中のイモを1つでいい、わしにくだされ」 
   女の人は、ジロリとお坊(ぼう)さんを見ました。 
   この女の人は、みすぼらしいお坊(ぼう)さんに、イモをあげるのがいやだったので、 
  「このおイモは、食べられませんよ」 
  「えっ、どうして?」 
  「これは、おイモそっくりの石なのです」 
  「そうか、それは仕方(しかた)がない」 
   お坊(ぼう)さんは頭を下げると、また、トボトボと道を歩いていきました。 
  「うふふ。うまくいったわ。だれが、大事(だいじ)なおイモをあげるもんですか」 
   次(つぎ)の年の、秋になりました。 
  「今年も、おいしいおイモがたくさん取(と)れますように」 
   あの女の人は、大きなザルをかかえて、自分の畑(はたけ)に行きました。 
   さっそく、畑(はたけ)の土をほり返(かえ)してみますと、去年(きょねん)よりも大きなイモがドッサリと出てきます。 
  「今年は豊作(ほうさく)だわ。それに、ズッシリと重(おも)くて、よく実(み)がつまっている。・・・しかし、本当に重(おも)たいわね。まるで石みたい。・・・あれ、これは!」 
   イモだと思っていたのは、イモそっくりの石でした。 
  「あら、これも、これも、これも、ぜんぶ石だわ!」 
   女の人の畑(はたけ)のイモは、全(すべ)て、イモにそっくりな石だったのです。 
   そのとき、女の人は去年(きょねん)の今ごろ、お坊(ぼう)さんにうそをついたことを思い出しました。 
  「ああ、あのとき、わたしがうそをついたから、神(かみ)さまが天罰(てんばつ)をあたえたんだわ」 
   女の人は反省(はんせい)して、それからは、まずしい人にほどこしをする、心やさしい人になりました。 
      おしまい         
         
         
        
       
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