| 
     | 
      | 
     
        6年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      けち自慢(じまん) 
      
        長屋の男たちが、けち自慢をしておりました。 
「日本広しと言え、おれほどけちな奴はおらんだろう。何しろ一日のごはんのおかずは、ウメボシが一個だけだからな」 
 すると、別の男が、 
「それは何とももったいない。おれなんて、ウメボシを見るだけだ」 
「見るだけとは?」 
「ウメボシを見ていると、口の中につばがたまるだろう。それをおかずにごはんを食べるんだ。そうすれば、ウメボシは減らんだろう」 
「なるほど、そいつは名案だ」 
と、感心しておりますと、別の男が馬鹿にしたように、 
「何をめめっちい事を。おれの方がもっとけちで、もっとおいしくごはんを食べられるぞ」 
「と、言うと」 
「おれのごはんのおかずは、醤油(しょうゆ)だ。醤油の入れ物に箸を突っ込み、箸に付いた醤油をおかずにしてごはんを食べるんだ。けっこううまいぞ」 
「そりゃあ、うまいだろうが、それでは醤油が減ってしまうだろう?」 
「いや、口の中のつばが箸について、それが醤油に戻るから、醤油の量は増える一方よ」 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
  | 
      | 
     |