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        2年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      越後屋(えちごや) 
      
       むかし、おしこみ強盗(ごうとう)の一団(いちだん)がおりました。 
   ある晩(ばん)、江戸(えど)一番(いちばん)の越後屋呉服店(えちごやごふくてん→今(いま)の三越(みつこし))へ、おしこむことにきまりました。 
   親分(おやぶん)は、手下(てした→子分(こぶん)のこと)を見わたして、  
  「よいか。人にけがをさせて、反物(たんもの→服(ふく))をよごしたのでは、金にならん。店(みせ)のやつは、かたっぱしからさるぐつわ(→声(こえ)を立てさせないように、手ぬぐいなどを口にかませること)をはめ、柱(はしら)にしばりつけろ。そのうえで、全部(ぜんぶ)持ち出(もちだ)すんだ。いいな」 
  「へえ」 
   そこで、用意(ようい)をととのえ、夜(よ)ふけを待(ま)って、越後屋(えちごや)ヘ押し入(おしい)りました。  
  「お店(みせ)に、どろぼうだー!」 
  と、走(はし)りでてくる番頭(ばんとう)に、こぞうに、女中(じょちゅう)などを、かたっぱしからつかまえて、柱(はしら)にくくりつけました。  
   けれども、さすがは天下(てんか)の越後屋(えちごや)。  
   出てくるわ、出てくるわ、いくらしばっても、しばりつくせません。  
   そのうち、あたりが明(あか)るくなってきて、  
   カァカァ 
  と、カラスの声(こえ)。 
  「そりゃ、夜(よる)があけた」 
  「つかまっては、たいヘん」 
   とうとう、おしこみ強盗(ごうとう)の一団(いちだん)は、何一(なにひと)つ取(と)らず、逃げ出(にげだ)したそうな。  
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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