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        4年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      みょうが宿 
      
        ある宿屋(やどや)の主人と女房が、こんな相談をしていました。 
「お前さん、今夜のお客さんは、大そうお金持ちだね。 
 あのふくれた財布を、うっかり忘れてくれればいいけどね」 
「そうだなあ。 
 何とか忘れ物をするような、よい方法はないものかなあ? 
 ・・・そう言えば、何でも、やたらとみょうがを食べさせると、忘れっぽくなると言うぞ。 
 よし、さっそく食べさせてみよう」 
 こうしてその夜は、お汁もみょうが、おかずもみょうが、なにもかもみょうがづくしの料理をつくって出しました。 
 さあ、お客のほうはびっくりです。 
「こう、みょうがだらけのおかずでは、たまらぬわ」 
と、次の朝早く、お客は宿屋を出て行きました。 
 お客が出て行くと、主人と女房は急いでお客の部屋に入り、 
「さあ、忘れ物はないかな?」 
と、探してみましたが、残念ながら何一つ忘れ物はありません。 
「はて、みょうがの効き目が、なかったかな?」 
 主人が言うと、女房が答えました。 
「お前さん、みょうがの効き目があったよ。お客さんが、忘れていったよ」 
「えっ、何が?」 
「あのお客さん、かんじんかなめの宿賃(やどちん)を払うのを、忘れていったよ」 
      おしまい         
         
        
       
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