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        2年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      じしゃく宿(やど) 
      
       宿場町(しゅくばまち→街道(かいどう)ぞいの、宿屋(やどや)が集(あつ)まったところ)の町はずれに、貧乏(びんぼう)な宿屋(やどや)が三げんありました。 
   たいていの旅人(たびびと)は、そこをとおりすぎて、大きな宿屋(やどや)にとまってしまいます。 
  「何(なん)とか、はんじょうする方法(ほうほう)は、ないものか」 
  と、一けんの宿屋(やどや)の主人(しゅじん)は、考(かんが)えていましたが、 
  「おおっ! いいことがある」 
  と、ポンと、ひざをたたきました。 
   どこからか、大きなじしゃくを買(か)ってきますと、げんかんにすえつけました。  
   そして、旅人(たびびと)がやってきますと、細(こま)かくくだいた鉄(てつ)くずを、パラパラパラッと、頭(あたま)にふりかけます。  
   すると、旅人(たびびと)は、じしゃくにすいよせられて、すーーっと、宿屋(やどや)に入っていくのでした。  
   それをみていた、むかいの宿屋(やどや)の主人(しゅじん)は、  
  「こいつは、うまい考(かんが)えだ」 
  と、こちらも同(おな)じく、大きなじしゃくをすえつけました。 
   旅人(たびびと)がやってきますと、二けんの家(いえ)で、いきおいよく鉄(てつ)くずをふりかけます。  
   すると、おかしなことが、おこりました。  
   旅人(たびびと)は、両方(りょうほう)のじしゃくにすいよせられて、どちらへも、うごけず、立ちつくしたまんまです。  
   それをみていた、べつのもう一けんの小さな宿屋(やどや)の主人(しゅじん)が、はたきを持(も)ってくると、旅人(たびびと)の頭(あたま)の上の鉄(てつ)くずをはらいおとして、さっさと、自分(じぶん)の宿屋(やどや)へつれていってしまいました。  
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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