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        2年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      化け物(ばけもの) 
      
      
       夏(なつ)のばんの、ことでございます。 
   あつくなりますと、せすじがぞーっとするような、おばけの話(はなし)がはやるもので、今夜(こんや)も、長屋(ながや)の若い者(わかいもの)が五、六人集(あつ)まって、おばけ話(ばなし)をしようということになりました。 
   あかりをいっぱいつけ、一つはなしたら、あかりを一つ消(け)してゆきます。  
   あかりがすべて消(き)えますと、化け物(ばけもの)が出てくるといわれています。  
   さて、あかりが最後(さいご)の一つになったころ、だれもがおそろしくなって、話(はな)そうとしません。  
  「ごんべえ、おまえがはなしをして、あかりを消(け)せ。これじゃあ、夜(よる)があけてしまうわ」 
  「まあ、待(ま)て待(ま)て、いま、小便(しょうべん)をしてからな」 
   ごんべえが、戸(と)の外(そと)に出ると、おどろいたことに、おそろしげな化け物(ばけもの)が、  
  「まだか、まだか。あかりを全部(ぜんぶ)消(け)したら、出(で)て行(い)ってやろうと待(ま)っているのに、いつまで待(ま)たせるんだろう」 
  と、大あくびをしていました。 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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