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        6年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      あせ 
      
       
      
       
        ある夏の暑い日。 
 外出先から帰って来た旦那(だんな)が、小僧の信吉(しんきち)に言いました。 
「あつい! あつい! あつい! 今日のあつさはとくべつじゃ。信吉、すまんが後ろから、そこの大うちわであおいでおくれ」 
「はーい」 
 信吉は返事をすると、旦那の後ろにまわって、うちわの柄(え)が折れるくらいに力を入れて、大うちわで風を送ってやりました。 
 すると旦那の体から、みるみるあせが引いていきます。 
「ああっ、さっぱりした。信吉、お前のおかげで、あせはどこかへふっ飛んでいったぞ」 
 旦那が気持ち良さそうに言うと、後ろの信吉は全身にあせをかきながら言いました。 
「そうでございましょう。なにしろあせは、全部わたくしの方にまいりましたから」 
      おしまい         
         
         
        
       
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