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        5年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      えんまの病気 
      
        地獄(じごく)のえんまさまが、突然病気になりました。 
 地獄のお医者さまにみせましたが、えんまさまの病気はいっこうによくなりません。 
 えんまさまは、鬼(おに)たちをまくらの近くに呼び寄せて言いました。 
「地獄の医者では無理だから、しゃば(→人間の世界)の名医をつれてまいれ」 
「ははっ。かしこまりました」 
 しかし、どういう医者が名医なのかわかりません。 
 そこで鬼たちは、えんまさまに尋ねました。 
「あの、名医の見分け方を教えてください」 
 するとえんまさまは、少し考えて。 
「うむ、名医の見分け方か。・・・おおっ、そうそう。下手な医者は多くの人間を死なせるから、門口(まぐち→家の出入り口)に幽霊(ゆうれい)が多くいるはず。その反対に幽霊のいない医者が、上手な名医というものじゃ」 
「なるほど。さすがはえんまさま」 
 そこで鬼たちは人間の姿に化けると、しゃばへと出かけて行きました。 
 
 人間の姿に化けた鬼が医者をたずねると、どの医者の門口にも、幽霊がうろうろしています。 
「これはいかん」 
 表通りの医者は全てだめなので、鬼たちは裏通りに行きました。 
 するとありがたい事に、幽霊が一人もいない医者の家があります。 
「おう、これこそ一番の名医だろう」 
 鬼は中に入り、ちょうど来ていた客に声をかけました。 
「この家のお医者は、さぞかし名医であろうな」 
 すると客は、首をかしげて答えます。 
「さあて、どうですかな。何しろ今日、開業(かいぎょう→オープン)したばかりですから」 
      おしまい         
         
        
       
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