|
|
6年生の江戸小話(えどこばなし)
やぶ医者
お使いを頼まれた小僧が走っていると、向こうから医者がやってきました。
小僧と医者は見事にぶつかり、医者ははずみで転んでしまいました。
「こら、あぶないではないか!」
医者は立ち上がると、小僧の頭を手でたたこうとしました。
すると小僧が、
「手だけはかんべんを! 足でけるのなら、いくらでもかまいませんが、手でぶつのだけは、どうか、どうか、ごかんべんを」
と、泣きながら言います。
「はて? 足でける方が痛いだろう? なぜ、手でぶつのはだめなのだ?」
医者が不思議そうに聞くと、小僧は言いました。
「足でけられても、痛いだけで命には別状ありません。しかし、あなたさまのお手にかかると、助かる者も助からないと、もっぱらの評判ですから」
おしまい
|
|
|