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        6年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      ウマのクソが三つ 
      
        むかし、金持ちのおじいさんがいました。 
 このおじいさんには三人の息子がいますが、自分の死んだあと、誰に自分のあとを継がせようかと悩みました。 
(どうせなら一番しっかりした者に、あとを継がせたいのう) 
 そこでおじいさんは、三人の息子を呼んで言いました。 
「お前たちは、この世で何が一番欲しいんだ?」 
 すると、長男(ちょうなん)が言いました。 
「おれは、ウマのクソが三つもあればいい」 
「ウマのクソ?」 
 おじいさんは顔しかめると、次男(じなん)に聞きました。 
「おれは、日本中に大判小判をしきつめてえ」 
「日本中に大判小判とは、考えの大きなやつだ」 
 おじいさんは感心すると、今度は三男(さんなん)に聞いてみました。 
「おれは海から水引いて、日本国中を田んぼにしたい」 
「日本中を田んぼにか。これもまた、考えの大きなやつだ」 
 おじいさんはまたまた感心すると、長男に言いました。 
「ウマのクソが三つ欲しいとは、弟たちに比べてなんて考えの小さなやつだ!」 
 すると長男は、おじいさんに言いました。 
「日本中に大判小判をしきつめると言うが、どうやってその大判小判を集めて、だれがその金使うんだ? 
 それに海から水を引いて日本中を田んぼにすると言うが、それではどこに住んで、誰がそんな広い田んぼをたがやすんだ? だいたい海の塩水では、イネがかれてしまうぞ。 
 人間は、コツコツまじめに働いて生きていくものだ。 
 大判小判をしきつめるなど、海の水をひいて田んぼにするなど、そんな馬鹿げた事を言うやつの口に、ウマのクソを1つづつ食わせてやりてえ。 
 それを聞いて喜んだ人の口にもな」 
 それを聞いたおじいさんは、 
「なるほど、やっぱり長男は長男だけのことはある」 
と、感心して、長男に自分のあとを継がせたのです。 
      おしまい         
         
         
        
       
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