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        6年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      貧乏医者(びんぼういしゃ) 
      
        あるところに、腕はいいが貧乏の医者がいました。 
 ある日、その医者がガックリと肩を落とし、とぼとぼと歩いていました。 
「先生! いかがなさいました? どこか具合でも、お悪いのですか?」 
 通りがかりの町人が声をかけると、医者は残念そうな顔をしていいました。 
「いやいや、そうではない。実は病人を、三人もなくしてしまったのじゃ」 
「えっ、三人も死んでしまったのでございますか。それは、お気の毒に。でもそれは、先生のせいではありません。その人の運命ですよ」 
「いや、そうじゃない。三人とも、すっかり病気が治ってしまったのじゃ」 
「・・・? それは、めでたい事では?」 
「いやいや、三人も病人をなくしてしまっては、わしは明日から食べる銭にも不自由する。そう思うと、悲しくてな」 
      おしまい         
         
         
        
       
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