| 
      | 
     
        4年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      将棋(しょうぎ)がたき 
      
        横町のいんきょと、表通りのいんきょが、二人で将棋をさしています。 
 どうやら横町のいんきょの方が二回続けて負けて、この三回目も負けそうです。 
「待った、待った」 
 横町のいんきょが、待ったをすると、 
「いや、待てぬ。これで二回も待ったをしたのだ、もうだめだ」 
と、表通りのいんきょは、冷たく言います。 
「もう一度だけだ、たのむ」 
「いいや、だめだ」 
「そこを何とか、たのむ」 
「だめだったら、だめだ」 
 しまいには、 
「なにをー!」 
「なにぃー!」 
と、言って、将棋盤(しょうぎばん)をひっくり返すしまつ。 
「もうお前とは、一生将棋はささんぞ」 
 怒って、別れてしまいました。 
 
 ところが二人とも、その日の夕方にもなりますと、なんとなくそわそわ。 
「あの時、待ったをしてやりゃあよかった」 
「あの時、すなおに負けを認めていれば、今頃は酒をくみかわして・・・」 
と、しきりに、けんかをした事がくやまれてなりません。 
 そこで横町のいんきょは、何とか仲直りの方法はないものかと表通りまでやってきますと、表通りのいんきょも、そわそわそわそわと、門を出たり入ったりしております。 
 二人は、ばったりと目が合うと、つい、 
「さっきのは、お前が悪いんだぞ!」 
 もう一方も、負けずに、 
「いいや、お前が悪いんだ!」 
「では、どっちが悪いか、将棋で決めよう」 
「おお、将棋で決着をつけるぞ!」 
と、言ってあがりこみ、さっそく将棋盤をかこんでさし始めました。 
 
 将棋好きの人は、だいたいがこんなものです。 
      おしまい         
         
        
       
     | 
      | 
     |