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        3年生の江戸小話(えどこばなし) 
        
      えんまのかんがえ 
      
        この頃は病気で死ぬ人が少なくなってきたので、地獄がひまになりました。 
 そこでえんま大王は、鬼たちを集めて相談をしました。 
 まず、赤鬼(あかおに)が言いました。 
「地獄がひまになったのは、医者が病人を残らず治してしまうせいです。医者という医者を、みんな地獄へ連れてきましょう」 
「それは、名案だ」 
 青鬼も、賛成しました。 
「どうでしょう。えんまさま」 
 鬼たちがたずねると、えんま大王は首を横に振りました。 
「いや、それはちと、考えものだぞ」 
「なぜで、ございますか?」 
「よく考えてみろ。医者が薬のさじかげんを間違えたり、見たて違いをしてくれるおかげで、本当は死ななくてもよい人間が、ここにやってくるのだ。やぶ医者までが一人残らずいなくなっては、ますます困る。連れてくるのは、くれぐれも腕の良い名医にかぎるぞ」 
      おしまい         
         
         
        
       
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