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        4年生の江戸小話(えどこばなし) 
         
      るす 
      
        貧乏浪人(びんぼうろうにん)の家に、米屋がやって来ました。 
「ごめんください」 
「誰だ?」 
「へい、横町の米屋でございます。たまっているおかんじょうを、いただきにまいりました」 
「ああ、米屋か。今は、るすじゃ」 
 返事をした声は、たしかに浪人(ろうにん)の声です。 
 不思議に思った米屋は指につばをつけると、しょうじに穴を開けて中をのぞきました。 
 すると確かに浪人がいて、こたつにあたっています。 
「もしもし、るすだとおっしゃいますが、だんなはそこにいるじゃありませんか」 
 しょうじの穴からのぞきながら米屋が言うと、浪人が怖い顔で言いました。 
「ぶれい者! しょうじに穴を開けたな! ここはかりにも、おれの城だ。その城に穴を開けるとは、何事だ!」 
「へへーい。これはとんだそそうをいたしました」 
 米屋はあわてて紙を取り出してつばをつけると、穴の開いたしょうじにペタンとはりつけました。 
「はい、これで元通りに直しました」 
 すると中から、浪人が言います。 
「それでは、もう見えぬか?」 
「はい、見えませぬ」 
「よし、それなら今は、るすじゃ」 
      おしまい         
         
        
       
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