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        4年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
龍王(りゅうおう)からおしえられた踊(おど)り 
山口県の民話(みんわ) 
      
       むかしむかし、中村というところに、赤ちゃんの取り上げの上手なおばあさんがいました。 
   どんなに難産(なんざん)でも、このおばあさんの手にかかれば、すぐにうまれるので、『中村の取り上げばあさま』といって、知らない者はいませんでした。 
   ある日の真夜中、おばあさんの家の玄関(げんかん)をたたく者がいます。 
   こんな時間に来るのは、急産(きゅうざん)の取り上げにちがいないと思い、おばあさんはすぐに支度(したく)をすると、外へ飛び出(とびだ)しました。 
   外には、使いの男がいて、  
  「こんなにおそくにすまんが、一緒(いっしょ)にきてください」 
  と、いいました。 
  「それはいいが、どこの家かいの?」 
  と、おばあさんがたずねると、 
  「ずっと遠くです。案内(あんない)しますから、足元に気をつけてください」 
  と、男は先に立ってどんどん歩いていきます。 
   真暗闇(まっくらやみ)ですが、なぜか足元だけは明るいので、おばあさんはなんとか転ばずに歩けました。 
   そのうち波の音が聞こえてきたので、海が近いなあと思ったとたん、おばあさんは気を失(うしな)ってしまいました。 
   おばあさんが気をとりもどすと、そこは金銀(きんぎん)まばゆい龍宮城(りゅうぐうじょう)だったのです。 
   おばあさんは、龍宮城(りゅうぐうじょう)の主の龍王(りゅうおう)の前に出されました。 
  「夜中に、遠いところごくろうであった。そちに、姫(ひめ)の出産(しゅっさん)のかいぞえをたのみたい」 
   おばあさんはビックリしましたが、お産(さん)と聞いてはジッとしていられません。 
   さっそく姫(ひめ)の部屋へいくと、ひどい難産(なんざん)で、姫(ひめ)の顔には血の気がありません。 
  「よしよし、すぐに楽にしてやるからな」 
   さっそくおばあさんはしたくに取りかかり、すぐに玉のような男の子が生まれました。  
   龍王(りゅうおう)は大喜(おおよろこ)びで、おばあさんの前にほうびとして、金銀サンゴを山のようにつみました。 
   けれど、おばあさんはそれを受取ろうとしません。  
  「お産(さん)の礼をしたいが、そちはいったい、何がほしいのじゃ? なんなりと取らせるゆえ、もうしてみるがよい」 
  と、いうと、おばあさんはおそるおそる答えました。 
  「わたくしの村にあまり雨が降(ふ)らず、田んぼのイネがかれようとしています。どうか龍王(りゅうおう)さまのお力で、雨を降(ふ)らせてもらいたい」 
   この村人を思う気持ちに感心して、龍王(りゅうおう)はその願(ねが)いを聞き入れました。 
  「たやすいこと。今後はわしをまつって、豊年(ほうねん)おどりをおどるがよい。さすれば大雨を降(ふ)らせよう」 
   おばあさんが龍宮城(りゅうぐうじょう)を去って村に帰りつくと、いなくなったおばあさんをさがして、村中大さわぎでした。 
   おばあさんがわけを話して龍王(りゅうおう)との約束(やくそく)をつげると、村人は大喜(おおよろこ)びです。 
   そして村人たちは、このおばあさんを「龍王(りゅうおう)ばあさま」と呼(よ)ぶようになりました。 
   その踊(おど)りが山口県に今に伝(つた)えられる、楽踊(がくおど)りの始まりだという事です。 
      おしまい         
         
        
       
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