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        2年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
お酒(さけ)の好(す)きな子ザル 
広島県(ひろしまけん)の民話(みんわ) 
       むかしむかし、ある山に、お母(かあ)さんと子どものサルがすんでいました。 
   こまった事(こと)に、子ザルはお酒(さけ)が大好(だいす)きで、こっそり人の家(いえ)にしのびこんでは、お酒(さけ)をなめていました。 
  「酒(さけ)をのむとは、めずらしいサルだ。よし、あのサルをつかまえてやろう」 
   それを見た猟師(りょうし)は、おけにいっぱい酒(さけ)を入れて、山のサルの通(とお)る道(みち)へおきました。 
  「くんくん。おや、いいにおいがするぞ」 
   においをかぎつけた子ザルが、おけのところにやってきました。  
  「わあっ、お酒(さけ)だ!」 
   子ザルは大喜(おおよろこ)びで、お母(かあ)さんのところへ行(い)って言(い)いました。 
  「あのね、山道(やまみち)に、お酒(さけ)があるよ」 
   するとお母(かあ)さんザルは、こわい顔(かお)で言(い)いました。 
  「だめだめ! お前(まえ)をつかまえようとして、猟師(りょうし)がわざとおいたにちがいない。どんなことがあっても、飲(の)んではいけませんよ!」 
   でも、お酒(さけ)の好(す)きな子ザルは、がまんができません。 
  「一口だけなら、のんでもいい?」 
  「だめだめ!」 
  「なめるだけなら、いい?」 
  「だめだめ!」 
  「なら、においをかいでもいい?」 
   あんまりしつこく言(い)うので、お母(かあ)さんザルは、 
  「においをかぐぐらいならいいけど、ぜったいに飲(の)んではいけませんよ」 
  と、言(い)ってしまったのです。 
   子ザルはすぐに、おけのところへ飛(と)んでいって、お酒(さけ)のにおいをかぎました。 
  「ああ、いいにおいだ。おいしそうだなー」 
   においだけと、お母(かあ)さんザルと約束(やくそく)しましたが、でも、においだけなんて、とてもがまんができません。 
  「一口ぐらいなら、いいだろう」 
   子ザルはお母(かあ)さんとの約束(やくそく)を忘(わす)れて、ゴクリとお酒(さけ)を飲(の)みました。 
  「おいしいな。もう一口」 
  「これでおわりにしよう。もう一口」 
  「さいごに、もう一口」 
  「おしまいに、もう一口」 
  「おまけに、もう一口」 
  「ぷはーっ、・・・よっぱらっちゃった」 
   おけのなかのお酒(さけ)を、すっかり飲(の)んでしまった子ザルは、そこへたおれて動(うご)けなくなりました。 
  「しめしめ、うまくいったぞ」 
   さっきから木の後(うし)ろにかくれていた猟師(りょうし)は、たおれている子ザルをひろいあげると、山をおりていきました。 
   かわいそうに子ザルは、お母(かあ)さんとの約束(やくそく)を守(まも)らなかったために、二度(にど)とお母(かあ)さんのところへもどることができませんでした。 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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