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        5年生の日本民話 
          
          
         
寝太郎物語(ねたろうものがたり) 
山口県の民話 
       むかしから、佐渡ヶ島(さどがしま)は金(きん)が取れることで有名でしたが、勝手に金を持ち出すこと、いえ、たとえひとにぎりの砂(すな)を持ち出すことも禁(きん)じられていました。 
   さて、ある庄屋(しょうや)の息子に、寝太郎(ねたろう)と呼(よ)ばれる男がいました。 
   この寝太郎(ねたろう)は、名前のように、毎日毎日寝(ね)てばかりいるのです。 
   ところがあるとき、この寝太郎(ねたろう)が突然(とつぜん)起き上がり、父親である庄屋(しょうや)に言いました。 
  「お父さん、千石船(せんごくぶね)を二そうつくってください」 
  「よしよし、さっそく船大工を呼び寄(よびよ)せよう」 
   父親が千石船をつくってやると、今度は、  
  「わらじを、千石船いっぱいに用意してください」 
  と、いいました。 
   庄屋(しょうや)がその通りにしてやると、今度は、 
  「あの千石船にわらじを積みこんで、船乗りを七、八人やとってください」 
  と、いいました。 
   父親がその通りにしてやると、寝太郎(ねたろう)は喜んで船に乗り込(のりこ)み、行く先も告げずに出発しました。 
   船は西へ西へと向かい、玄海(げんかい)の荒海(あらうみ)に出ると、まっすぐ日本海の大海原(おおうなばら)を進んで行きました。 
   こうしてたどり着いたのは、佐渡ヶ島(さどがしま)でした。 
   港に船を着けると、寝太郎(ねたろう)はさっそく島の人々を呼び集(よびあつ)め、 
  「はき古しのわらじを、新しいのとかえてあげよう。しかもただじゃ。はき古しのわらじは、古いのほどええんじゃ」 
  と、言って、はき古したわらじと新しいわらじをとりかえました。 
   はき古したわらじが、船いっぱいになると、  
  「さあ、用事はすんだ。村へかえろう」 
  と、船を出しました。 
   はき古しのわらじを船いっぱいに積みこんで帰ってきた寝太郎(ねたろう)は、今度は大きな桶(おけ)を父親にねだりました。 
   父親はさっそく、桶職人(おけしょくにん)をやとって桶(おけ)をつくらせました。 
   桶(おけ)が出来上がると、寝太郎(ねたろう)は桶(おけ)に水をいっぱいはり、船乗りたちにその中でわらじを洗(あら)わせました。 
   この仕事は何日も何日も続けられ、やっと全部のわらじを洗(あら)い終わると、こんどは桶(おけ)の水を上の方からそっとくみ出させました。 
   そうして水がだんだん減(へ)ってきて、桶(おけ)の底が見えてきました。 
   よく見ると、桶(おけ)のそこには金色に光るものが見えます。 
   手にすくってみると、それは金の砂(すな)でした。 
  「金じゃ。金じゃ。金の砂(すな)じゃ」 
   船乗りたちの喜びの声は、すぐに村中に伝わりました。  
   寝太郎(ねたろう)は、ひとにぎりの砂(すな)も持ち出すことを禁(きん)じられていた佐渡(さど)の土を、どうやって持ち出そうかと、寝(ね)ながら考えていたのです。 
   寝太郎(ねたろう)はこの金を使って開作地を作り、かんがい水路を通して千町田という広い水田を作り、村人に分けあたえました。 
   村人は大変感謝(たいへんかんしゃ)して、寝太郎(ねたろう)を寝太郎大明神(ねたろうだいみょうじん)として、まつるようになりました。 
      おしまい         
         
        
       
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