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        4年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
家宝(かほう)の皿 
大阪府(おおさかふ)の民話(みんわ) 
      
       むかしむかし、大阪(おおさか)に、ある大金持がいました。 
   この大金持の屋敷(やしき)には、先祖代々(せんぞだいだい)の宝(たから)として一枚(いちまい)の皿が伝(つた)えられています。 
   この皿は青磁(せいじ)といって、青みがかったみどり色の、とてもめずらしいものでした。 
   家の主はこの皿をなによりの自慢(じまん)にし、桐(きり)の箱におさめてふくさで包(つつ)んで、それはそれは大切にしています。 
   ある時の事、この大金持のだんなは、友だちを二、三人つれて、大阪(おおさか)でも有名な料理屋(りょうりや)へいきました。 
  「さあ、食ってくれ。たんと食ってくれ」 
   山のような料理(りょうり)が目の前にならべられましたが、その出された皿の中に、自分が宝(たから)としている青磁(せいじ)の皿とそっくりのものがありました。 
   だんなはその皿を手にとって、つくづくとながめていましたが、  
  (なんと不思議(ふしぎ)な。わしの物と少しもかわらんではないか) 
   いっしょにいた友だちも、なかなかの目利(めき)きで、次々とその皿を手にとっては、 
  「いやあ、まことに見事なものよ」 
  「これは天下に二つとない、立派(りっぱ)な皿じゃ」 
   などと、ほめたのです。  
   そのようすをだまって見ていただんなは、料理屋(りょうりや)の主人を呼(よ)びました。 
  「主人、この皿をぜひゆずってもらいたい」 
   これを聞いた料理屋(りょうりや)の主人は、ビックリです。 
  「そ、それだけは。この皿は大切なお客さまがいらした時だけ、もちいております家宝(かほう)の皿ゆえ、なにとぞお許(ゆる)しくださいませ」 
   それを聞くと、金持ちのだんなは、  
  「それならなおのこと、ゆずってもらいたい。三十両(さんじゅうりょう→約二百十万円(やく210まんえん))で買い受けましょう」 
   金持ちのだんなは大判三枚(おおばんさんまい)をほうり出すと、その皿を手にとってこなごなに打ちくだいてしまったのです。 
  「ああっ・・・」 
   店の主人は、くだけた皿を見つめていましたが、やがて座(ざ)を立っていってしまいました。 
   このなりゆきを見ていった、友人たちが、  
  「どうしてまた、そのようなもったいないことを」 
  と、たずねると、大金持のだんなは、 
  「わしの持っておる青磁(せいじ)の皿は家の宝(たから)。世間にそれと同じ物が二つあっては、家の名がすたるわ」 
  と、答えたのです。 
   その夜の事、いつものようにだんなは、青磁(せいじ)の皿をながめて楽しもうと、桐箱(きりばこ)のふたをしずかにあけました。 
  「あーっ!」 
   さけぶと、その場にのけぞるように倒(たお)れました。 
   なんとその中にあった青磁(せいじ)の皿は、こなごなに打ちくだかれているではありませんか。 
   しかもかけらの下には、大判(おおばん)が三枚(さんまい)、ちゃんと入っていたという事です。 
      おしまい         
         
        
       
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