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        2年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
鯛女房(たいにょうぼう) 
佐賀県(さがけん)の民話(みんわ) 
       むかしむかし、あるところに、一人者(ひとりもの)の漁師(りょうし)がいました。 
   ある日の事(こと)。 
   釣(つ)りしていた漁師(りょうし)が、強(つよ)い手ごたえを感(かん)じて釣り上(つりあ)げてみると、うろこがピカピカ輝(かがや)く、大きな赤ダイがつれました。 
   手カギを入れて、血(ち)抜(ぬ)きをしようとすると、 
  「殺(ころ)さないで!」 
  と、うったえるような声(こえ)を感(かん)じたので、そのまま逃(に)がしてやったのです。 
   しばらくたったある日、漁師(りょうし)は人のすすめで、今(いま)まで見たこともないほど、赤ら顔(あからがお)の女の人を女房(にょうぼう)にもらいました。 
   その女房(にょうぼう)は、料理(りょうり)が大変上手(たいへんじょうず)で、特(とく)にみそ汁(しる)やおすましなどは、天下一(てんかいち)の味(あじ)です。 
   あまりにも、おいしいので、  
  「こんなにうまい料理(りょうり)は、はじめてだ、どうやって作(つく)るんだ?」 
  と、聞(き)いたのですが、女房(にょうぼう)はそれには答(こた)えず、はずかしそうに顔(かお)を赤らめて、 
  「男の人が、そんな事(こと)を気にするもんでねえ」 
  と、笑(わら)っていいました。 
  「まあ、たしかに」 
   男はそう言(い)いましたが、やっぱり気になり、翌朝(よくあさ)、早起(はやお)きして、台所(だいどころ)で料理(りょうり)を作(つく)る女房(にょうぼう)の姿(すがた)をのぞき見ました。 
  「ほほう。今日(きょう)はすましか。あれがなかなかに、うまいんだ」 
   女房(にょうぼう)の作(つく)るところを、ジッと見ていましたが、別(べつ)に変(か)わったところはありません。 
  「さて、いよいよ味付(あじつ)けだが、いったいどうやって。・・・なっ、なんと!」 
   のぞいていた漁師(りょうし)はビックリ。 
   なんと、女房(にょうぼう)は、すましを入れたナベの上にまたがって、味付(あじつ)け代(が)わりに、シャーシャーと、おしっこをしていたのです。 
   漁師(りょうし)の声(こえ)に、見られた事(こと)を知(し)った女房(にょうぼう)は、全(すべ)てを話(はな)しました。 
  「実(じつ)は、私(わたし)は、あなたに命(いのち)を助(たす)けてもらった赤ダイなのです。恩返(おんがえ)しをしようと、こうしてやってきたのですが、正体(しょうたい)を見られたからには、これ以上(いじょう)、ここにいることは出来(でき)ません」 
   そして、追(お)いかける漁師(りょうし)を振(ふ)りきって、岬(みさき)から海(うみ)に飛び込(とびこ)んだのです。 
   するとまもなく、海面(かいめん)に大きな赤ダイが現(あらわ)れて、なごりおしそうに、男の姿(すがた)を振(ふ)り返(かえ)りながら、波(なみ)の中に消(き)えていったという事(こと)です。 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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