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        4年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
バケモノをたいじしたネコ 
富山県(とやまけん)の民話(みんわ) 
       むかしむかし、あるところに、ネコの絵をかくのが、とても上手な子どもがいました。 
   ねむっているネコ、遊んでいるネコ、ごはんを食べているネコと、どのネコの絵も本物そっくりで、大人の絵かきもかなわないほどでした。 
   ある時、子どもは何を思ったのか、  
  「おら、ネコの絵をかきながら旅をしてくる」 
  と、言って、絵の具ばこをかついで家を出ていきました。 
   子どもはお金がなくなると、ネコの絵をかいて売り、それでごはんを食べたり、宿屋にとまったりしました。 
   ところがある日、さびしい村はずれまできた時、宿が決まらないまま、日がくれてしまいました。  
  (弱ったな。どっかにとまるところはないかな?) 
   トボトボと歩いていると、古いお寺がありました。  
   まるでおばけ屋敷(やしき)みたいに荒(あ)れたお寺で、だれも住んでいません。 
  (しかたがない。気味が悪いけど、今夜はここでとまろう) 
   子どもは床板(ゆかいた)のあちこちが落ちた、ほこりだらけのお堂(どう)にこしをおろしました。 
   むかしはりっぱなお寺だったのですが、和尚(おしょう)さんがなくなった後、おそろしいバケモノが住むようになって、お寺にとまった者は、だれでも食べられてしまうといううわさがたったため、このように荒(あ)れてしまったのです。 
   そんな事とは知らない子どもは、お堂(どう)のかべに自分のかいたネコの絵をはると、そのままよこになってねむりこんでしまいました。 
   すると真夜中ごろ、まるでイヌのように大きなネズミが出てきて、子どもにかみつこうとしたのです。  
   そのとたん、お堂(どう)のかべにはられた絵の中からネコが、次々ととびだしてきて、 
  「ニャオーーン!」 
  と、大きなネズミにかみついていきました。 
   でも、さすがは人食いネズミ、かみついたネコを振り払(ふりはら)うと、ネコに向かって鉄のようなキバをむきました。 
   ネコたちと大ネズミのたたかいに目をさました子どもは、こわくて足が動かず、逃(に)げることができません。 
   でもそのうちに、  
  「ギャオォォォーーー!」 
  と、いう大きな鳴き声とともに、大ネズミが倒(たお)れました。 
   そして子どもはビックリして、そのまま気を失(うしな)ってしまいました。 
   次の朝、子どもが目をさましてみると、目の前に大ネズミが血まみれになって死んでいたのです。  
  (おらをたすけてくれたネコは、どこへ行ったのかな?) 
   子どもがあたりを見回すと、かべにはったネコの絵のネコたちがいっせいに、  
  「ニャーオン」 
  と、鳴きました。 
   よく見ると、どのネコの体にもひっかききずのようなあとがついています。  
  「お前たち、助けてくれてありがとう」 
   子どもはネコの絵をはずしてふところに入れると、絵の具ばこをかついでお寺を出ていきました。  
   そんなことがあってから、この寺には二度とバケモノが出なくなったという事です。  
      おしまい         
         
        
       
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