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        5年生の世界昔話 
          
          
         
ふしぎな玉 
韓国(かんこく)の昔話 → 韓国のせつめい 
       むかしむかし、ある川のほとりに、まずしいおじいさんが、イヌとネコといっしょに、なかよくくらしていました。 
   おじいさんは森へいき、かれ枝(えだ)をひろい集めると、それを町で売って、そのお金でお米とお酒を買ってきました。 
  「さあ、さあ、おまえたち。こんやはひさしぶりに、ばんめしがたべられるよ」 
   おじいさんはイヌとネコにこういいながら、お米をナベに入れて火にかけました。  
   やがてお米はグツグツとにえて、おいしそうなにおいが、あたりにひろがりました。  
   そのとき、  
   トン、トン、トン。  
  と、戸をたたく音がしました。 
   おじいさんが出てみると、みすぼらしい旅人が、戸口にたっていました。  
   フラフラしており、今にもたおれてしまいそうです。  
  「わたしはおなかがすきすぎて、もう、うごく力もありません。どうか、食べ物をおめぐみください」 
   おじいさんはすぐに、その旅人を家の中に入れて、できたばかりのおかゆをたべさせてやりました。  
   それから、お酒の入ったツボを出してきて、おわんについでやろうとしました。  
   ところが、旅人はそのツボをひったくると、ゴクゴクと、みんな飲んでしまったのです。  
  「プハー。いい気持だ。あんたは、だいじな酒と米とを、すっかりわたしにくれてしまった。お礼にこれをあげよう」 
   旅人はこういって、おじいさんに小さなコハクの玉をくれました。 
  「これを、あの酒ツボに入れておきなさい」 
   こういうと、旅人のすがたは、かきけすように見えなくなりました。  
  「ふしぎな旅人だ。・・・たしか、これを酒ツボに入れろといっていたな」 
   おじいさんは、コハクの玉を酒ツボの中に入れてみました。  
   するとふしぎなことに、みるみるうちに、酒ツボはお酒でいっぱいになったのです。  
   おじいさんは、それをおわんについで飲んでみました。  
   そのお酒のおいしいこと。  
   いままで、こんなすばらしいお酒を飲んだことがありません。  
   おかわりをしようと、ツボの中をのぞいてみて、おじいさんはまたビックリ。  
   ツボの中のお酒は、さっきおわんについだぶんだけ、ちゃんとふえているのです。  
   それからは、おじいさんのくらしは、だんだんらくになりました。  
   おいしいお酒が、たちまち近所のひょうばんになって、みんなが買いにきたからです。  
   けれども、お金のない人には、ただでお酒をあげました。  
   こうしておじいさんとイヌとネコの三人は、なに不自由なく、たのしいまいにちを送っていました。  
   ところが、ある日のことです。  
   ふと、気がつくと、いつもツボいっぱいに入っているお酒が、だいぶへっているではありませんか。  
   よく見ると、あのたいせつなコハクの玉が見えません。  
   きっと、だれかにお酒をわけてあげたとき、その人のツボの中に、うっかりつぎこんでしまったのでしょう。  
   おじいさんのお酒は、その日からふえなくなりました。  
   そしてとうとう、すっかりなくなってしまいました。  
   おじいさんは、またびんぼうになりました。  
  「さあさあ、これからまたびんぼうぐらしだ。これが、さいごのごちそうだよ」 
   おじいさんはこういって、さいごのごちそうをイヌとネコにやりました。  
   次の日、イヌはネコにむかっていいました。  
  「ぼくは、コハクの玉のにおいを知っている。そばまでいけば、きっとにおいでわかる」 
   すると、ネコはいいました。  
  「あたしは、どこへでもコッソリもぐりこんで、さがしまわることができるわ」 
  「じゃあ、二人でさがしにいこう」 
   イヌとネコはさっそく、近所の家を一けん一けんさがし歩きました。  
   こうして、一週間がたち、二週間がたちました。  
   いっしょうけんめいさがしましたが、コハクの玉は、どうしても見つかりません。  
  「ひょっとすると、川のむこうに住んでいる人のところじゃないかな?」 
   イヌが、首をかしげていいました。  
  「きっとそうだわ。川のむこうをさがしてみましょう」 
  と、ネコがいいました。 
   いまは冬で、川はこおりついていたので、二人はらくに、むこう岸まで歩いていくことができました。  
   ところが、むこう岸のイヌやネコは、二人を知りません。  
   ですから、イヌたちは二人が近づくと、  
  「ウー、ワンワン」 
  と、ほえたてました。 
   ネコがコッソリしのびこもうとしても、すぐに見つかって、  
  「フーフー、ニャーオ、ニャーオ」 
  と、知らないネコからしかられました。 
   そこで二人は、人間も、イヌも、ネコも、みんなねしずまってから、コッソリさがしまわりました。  
   でも、やっぱりコハクの玉は見つかりません。  
   さむい冬がすぎて、もうすぐ春がやってきます。  
   川の氷は、とけはじめました。  
   けれども、コハクの玉は見つかりません。  
  「ああ、おじいさんは、食べ物もなくてこまっているだろうなあ」 
  と、イヌがつぶやくと、ネコがいいました。 
  「ねえ、あたしたち、新しい主人をさがしましょうか? おじいさんといっしょに、うえ死にするのもいやだし」 
  「この恩(おん)しらずめ! さんざんせわになっていながら、こまっているときにたすけないのか!」 
   イヌは、おこって、ほえたてました。  
  「ご、ごめんなさーい」 
   ネコは、背中(せなか)をまるめて小さくなりました。 
   その日の夕がた、二人はいままできたこともないほど遠くの、ある一けんやにつきました。  
   イヌは、家の外がわをまわって、さがしました。  
   ネコは、台所から中へもぐりこんで、さがしました。  
   そして、イヌがものおきに近づいたときです。  
  「クンクン。・・・あっ、このにおいは!」 
   あの、コハクの玉のにおいがしてきたのです。  
   イヌはいそいで、ネコをよびました。  
   二人はそっと、ものおきの中にしのびこみました。  
   どうやらにおいは、ものおきのすみっこにある、ほこりをかぶった箱(はこ)からしてくるようです。  
   きっと、この家の人は、コハクの玉にふしぎな力があることを知らないのでしょう。  
  「どうやって、この箱のふたをあけようか」 
   二人はそうだんして、その家にいるネズミにたのみました。  
   ネズミはその箱をいっしょうけんめいかじって、穴(あな)をあけてくれました。 
   さっそくネコが、そこから手をつっこんでみました。  
   ところが、ネコの手はみじかくて、コハクの玉までとどきません。  
   それを見て、ネズミは小ネズミをよびました。  
   小ネズミは穴(あな)の中にもぐりこんだかと思うと、コハクの玉をしっぽにまいてでてきました。 
   イヌとネコは、大喜びです。  
   二人はネズミたちに、なんどもなんどもお礼をいって、夜のあけるのもまたずに、川岸へもどってきました。  
   ところが川の氷は、もうすっかりとけてしまい、にごった水がごうごうと、音をたてて流れています。  
  「こまったわねえ。あたしは、泳げないんです」 
  と、ネコはなきそうになりました。 
  「だいじょうぶ。きみは、このコハクの玉をしっかりくわえて、ぼくの背中(せなか)にお乗り」 
   イヌはこういって、ネコを背中(せなか)に乗せました。 
  「いいかい。しっかりつかまっているんだよ。どんなことがあっても、口をあけてはいけないよ」 
   イヌは川の中へはいって、泳ぎだしました。  
   川の水はとてもつめたくて、イヌの足は、いまにもこおりそうでした。  
   けれども、かわいそうなおじいさんがまっていることを思うと、イヌはがんばって泳ぎました。  
   そして、ようやく岸辺に近づいたそのとき、  
  「やーい。イヌの背中(せなか)に、ネコが乗ってるぞ」 
  と、子どものさけぶ声がしました。 
  「どれ、どれ。へえ、おもしろいなあ」 
   子どもたちが岸ベに集まってきて、みんなでゲラゲラ笑いだしました。  
   それを見ると、ネコもなんだかおかしな気がしてきて、思わず「ククッ」と、笑いかけました。  
  「だめだっ。笑ってはいけない」 
  と、イヌがいいましたが、ネコはとうとうがまんができなくなって、「ププーッ」と、ふきだしてしまいました。 
   それといっしょに、口にくわえていた玉が、ポロリと川の中へおちました。  
   イヌはあわてて水の中にもぐって、玉をひろおうとしましたが、背中(せなか)には泳げないネコがいるので、先にネコを岸にあげてから、イヌは川の底にしずんだコハクの玉をさがしました。 
   でも、コハクの玉は見つかりません。  
   ネコはイヌにおこられるのがこわくて、高い木の上にのぼってしまいました。  
   イヌはなんどもなんども川にもぐって、コハクの玉をさがしましたが、もうヘトヘトになって動くことができません。  
   するとそこへ、近くで魚をつっていた人が、イヌのそばへやってきました。  
  「どうした? はらがへってうごけないのか? ようし。こいつはさっきつったやつだが、小さいからおまえにやるよ」 
  と、いって、魚をなげてくれました。 
   そのときイヌは、おじいさんのことを思いだしました。  
  「玉は見つからなかったけど、これを持っていってあげたら、おじいさんはきっと喜ぶだろう」 
   そのころおじいさんは、お金がないので、何日ものあいだ何もたべていませんでした。  
   イヌもネコも、新しい主人をさがしていってしまったのだろうと、思っていました。  
   そこへ、イヌが魚をくわえて帰ってきたのです。  
   おじいさんは、なみだを流して喜びました。  
   そしてさっそく、魚を焼こうとして、魚のおなかをさきました。  
   すると、コロリと小さなものがころがりでました。  
   なにげなく手にとってみると、なんとそれは、あれほどさがしていたコハクの玉だったのです。  
   コハクの玉のおかげで、おじいさんのくらしは、またらくになりました。  
   イヌはいつもおじいさんのそばによりそって、いろいろとせわをしてあげました。  
   けれどもネコは、イヌにおこられるのがこわくて、けっして二人のそばへは近よらせませんでした。  
      おしまい         
         
        
       
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