３年生の世界昔話(せかいむかしばなし)



かしこいグレーテル
グリム童話(どうわ)　→ グリム童話(どうわ)のせつめい

　むかしむかし、あるお屋敷(やしき)の主人(しゅじん)が、お手伝(てつだ)いのグレーテルに言いました。
「今日の晩(ばん)ごはんは、友だちといっしょに食べるから、ニワトリの丸焼(まるや)きを作っておくれ」
　それでグレーテルは、夕方になると、ニワトリを焼(や)き始(はじ)めました。
「だんなさま。お友だちは来ましたか？　もうすぐニワトリの丸焼(まるや)きができますよ」
「いや、まだ来ないんだ、どうしたのかな？」
　やがて、ニワトリの丸焼(まるや)きが出来ました。
「だんなさま。お友だちは来ましたか？」
「それがまだなんだ。すぐよんでくるから、丸焼(まるや)きを皿(さら)にのせておいてくれ」
　主人(しゅじん)が外へ飛び出(とびだ)すと、グレーテルは丸焼(まるや)きが上手に出来たかどうか確(たし)かめるために、一口パクリと食べてみました。
「うん、おいしくできたわ」
　ニッコリ笑(わら)って、グレーテルは丸焼(まるや)きを皿(さら)にのせました。
　でも、主人(しゅじん)は帰ってきません。
「丸焼(まるや)きは、あたたかい方がおいしいのに」
　そう言って、グレーテルはまた、丸焼(まるや)きをパクリ。
　それでも、主人(しゅじん)は戻(もど)ってきません。
　だから、もう一口パクリ。
　そのあとも、
「まだかしら」
　パクリ。
「おそいわねえ」
　パクリ。
「冷(さ)めちゃうのに」
　パクリ。
　とうとう、ニワトリの丸焼(まるや)きを、全部(ぜんぶ)食べてしまいました。
　そこへ、主人(しゅじん)が帰ってきて、
「友だちは、もうすぐ来るらしい。わたしは今のうちに、食事(しょくじ)の時に使(つか)うナイフを、よく切れるようにしておくよ」
と、ナイフをとぎ始(はじ)めました。
　さあ、たいへん。
　自分がニワトリの丸焼(まるや)きを食べてしまったことを、主人(しゅじん)に知れたら、グレーテルは怒(おこ)られてしまいます。
　どうするか悩(なや)んでいるとき、ついに主人(しゅじん)の友だちが来ました。
「あっ、そうだわ」
　わるぢえをひらめいたグレーテルは、急(いそ)いで玄関(げんかん)に行くと、主人(しゅじん)の友だちに、こっそり言いました。
「あなたがなかなか来ないので、だんなさまは、カンカンに怒(おこ)っています。どうやら、あなたの耳を切ってしまうつもりらしいですよ」
　友だちは、ビックリ。
　あわてて、逃(に)げました。
　その足音を聞いて、主人(しゅじん)はナイフを持(も)ったまま。
「おーい、どうしてうちで、ごはんを食べないんだよう」
と、追(お)いかけました。
　そのまま２人は、一晩中(ひとばんじゅう)、町を走り回っていました。
　おかげでグレーテルは、ニワトリの丸焼(まるや)きを食べたことを、主人(しゅじん)に知られなくてすみました。

おしまい