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        4年生の世界昔話 
          
          
         
クマたいじのゆうしゃ 
タイの昔話 → タイのせつめい 
      
       むかしむかし、ある森の近くに、おくびょうなお百姓(ひゃくしょう)がすんでいました。 
   ある日、お百姓(ひゃくしょう)とおかみさんが、いつものように畑をたがやしていると、森のおくで、ガサゴソと音がしました。 
  「はて、なんだろう?」 
   お百姓(ひゃくしょう)は、音のするほうを見てビックリ。 
   大きなクマが、のっそりのっそりと、出てきたのです。  
  「た、たすけてくれえ!」 
   よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、おかみさんをおきっぱなしにして、あわててにげだしました。 
   おかみさんも、声がでないほどビックリしましたが、でも、おかみさんはお百姓(ひゃくしょう)ほどよわむしではありません。 
  「ようし!」 
   おかみさんは、お百姓(ひゃくしょう)がおいていったオノをふりあげると、クマにむかっていきました。 
   そしておかみさんは、たった一人でクマとたたかい、とうとうクマをやっつけたのです。  
   おかみさんが、たおしたクマをひきずって家までかえると、よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、ビックリしていいました。 
  「わあ。にょうぼうのおばけだ!」 
   お百姓(ひゃくしょう)は、家の戸をしっかりしめて、おかみさんを中へいれようとしません。 
   おかみさんがクマに殺(ころ)されて、ばけてきたと思っているのです。 
  「しっかりしなさいよ。わたしですよ。おばけじゃありませんよ」 
   おかみさんがなんどもいったので、やっとよわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、おかみさんと死んだクマを家の中へいれてやりました。 
  「かんしん、かんしん。よくおまえ一人で殺(ころ)せたものだ。だが、もし人にきかれたら、このクマはわしが殺(ころ)したというんだぞ」 
  と、お百姓(ひゃくしょう)がいいました。 
  「あら、どうしてですか?」 
  「よく考えてみろ。男でさえも殺(ころ)せないクマを、なんで女のおまえが殺(ころ)せると思う。みんな、おまえがうそをついていると思うぞ。だからクマたいじをしたのは、わしだということにしておけ」 
   お百姓(ひゃくしょう)は、おかみさんにそういうと、さっそくお城(しろ)へいって、 
  「クマを殺(ころ)しました」 
  と、殿(との)さまにいいました。 
   殿(との)さまがしらべてみると、たしかにクマが殺(ころ)されています。 
  「なるほど。おまえはクマたいじの勇士(ゆうし)だ。けらいにしてやろう」 
   わけを知らない殿(との)さまは、よわむしのお百姓(ひゃくしょう)をけらいにして、ごほうびをたくさんあげました。 
   クマたいじのお百姓(ひゃくしょう)は、どこへいっても評判(ひょうばん)です。 
  「えっへん! おっほん!」 
   お百姓(ひゃくしょう)は毎日、大いばりで歩き回りました。 
   ところがある日、こまったことがおこりました。  
   お城(しろ)の井戸(いど)の中に、コブラという毒蛇(どくへび)がいるので、それをたいじするようにと、殿(との)さまに命令(めいれい)されたのです。 
  「わあ、こまったな。どうしよう?」 
   お百姓(ひゃくしょう)はおそろしくて、ブルブルとふるえだしました。 
   なにしろ、コブラの毒(どく)は、とても強くて、かまれたらすぐに死んでしまうのです。 
   でも、いつもいばっているので、コブラたいじができないとはいえません。  
   お百姓(ひゃくしょう)はしかたなしに、長いロープを井戸(いど)の中にたらして、井戸(いど)の中へと、おりていきました。 
   でも、井戸(いど)の中はうすぐらくて、どこにコブラがいるのかわかりません。 
  「ああ、こわい、こわい。やっぱり、コブラはたいじできませんと、あやまろう」 
   よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、はやく逃げ出(にげだ)そうと、ロープをむちゅうで引っ張(ひっぱ)りました。 
   しかし、ロープだと思ってにぎったのは、ロープではなくコブラだったのです。  
  「ひゃあ。コ、コ、コブラだあ!」 
   お百姓(ひゃくしょう)は、コブラをギュッとにぎったまま、手をブンブンとふりまわしました。 
   すると、お百姓(ひゃくしょう)がつかんだのは、ちょうどコブラの首だったので、コブラはいきができなくて、死んでしまったのです。 
  「・・・おや? おおっ! ばんざーい! コブラをやっつけたぞ。ロープをひきあげろ。はやくひきあげろ!」 
   お百姓(ひゃくしょう)は、大声でさけびました。 
   よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は、毒蛇(どくへび)のコブラを殺(ころ)したので、また殿(との)さまにほめられました。 
  「おまえほどいさましくて、強いものはいない。おまえがいてくれたら、となりの国の兵隊(へいたい)が、なん百人せめてきたって平気じゃ」 
  「さようでございますとも。敵兵(てきへい)の二千や三千、ただのひとひねりでございますわい。ワハハハハハ」 
   お百姓(ひゃくしょう)が、とくいになって殿(との)さまと話していると、けらいたちが、あわててやってきました。 
  「たいへんでございます。となりの国の兵隊(へいたい)が、この町の近くまでせめてきました!」 
  「なに、それはほんとうか。よし、クマとコブラをたいじした勇士(ゆうし)よ。おまえがいって、敵兵(てきへい)どもをひねりつぶしてこい!」 
  「え? わたし一人でですか?」 
  「そうだ、さっき、敵兵(てきへい)の二千や三千、ただのひとひねりと言ったであろう。期待しておるぞ!」 
   お百姓(ひゃくしょう)は、まっさおになりました。 
   でも、殿(との)さまのいいつけなので、しかたなしにでかけました。 
  「たった一人だなんて、どうしたらいいのだろう。・・・そうだ。まずは敵(てき)のようすをさぐってこよう」 
   お百姓(ひゃくしょう)は夜になると、コッソリと敵軍(てきぐん)のそばまでしのんでいきました。. 
   見ると、敵兵(てきへい)がおおぜいいるそばに、大きな木がありました。 
   お百姓(ひゃくしょう)は敵兵(てきへい)に見つからないように、その木の上にのぼりました。 
   そして、そっと耳をすましていると、敵兵(てきへい)たちは、こんなことを話しています。 
  「この国の兵隊(へいたい)でこわいのは、あの、クマとコブラをたいじした男だけだ。あいつさえやっつけてしまえば、こっちの勝ちだ」 
  「よし、まずは、あのクマたいじの勇士(ゆうし)をやっつけよう」 
   よわむしのお百姓(ひゃくしょう)は聞きながら、こわくてこわくて、ガタガタとふるえだしました。 
   ところが、あんまりふるえているので、つかまっていた枝(えだ)がおれてしまいました。 
   ドシーン!  
   お百姓(ひゃくしょう)はまっさかさまに、敵兵(てきへい)のいるまん中へ、ころがりおちました。 
  「敵(てき)だ! 敵(てき)が一人でせめてきたぞ!」 
   こうなればやけくそです。 
   お百姓(ひゃくしょう)は、すぐに立ちあがると、もっていた刀をふりあげ、 
  「こらあ! ものどもよく聞け! わしがクマとコブラをたいじした勇士(ゆうし)だぞ! わしは空からとびおりることもできるし、まいあがることもできる。さあどうだ。わしとたたかうものは、出てこい!」 
  と、大声でさけびました。 
   敵兵(てきへい)たちは、ビックリ。 
   空から突然(とつぜん)、評判(ひょうばん)のクマたいじの勇士(ゆうし)がとびおりてきたので、もう、こわくてなりません。 
  「それっ。にげろ、にげろ!」 
  と、あわててにげだしました。 
   こうして、クマとコブラをたいじしたお百姓(ひゃくしょう)は、おおぜいの敵兵(てきへい)を一人で追い返したので、殿(との)さまからたいそうほめられました。 
   そして国じゅうの人から、強い勇士(ゆうし)とほめられたのです。 
      おしまい         
         
        
       
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