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        3年生の世界昔話(せかいむかしばなし) 
          
          
         
世界一(せかいい)気前(きまえ)のいい男 
ロシアの昔話(むかしばなし) → ロシアのせつめい 
      
       むかしむかし、あるところに、アツムタイという男がいました。 
   アツムタイは、お客(きゃく)がくれば、いつも心からもてなしをして、何かがほしいとねだられれば、おしみなく、人にあげてしまう、そんな気前(きまえ)のいい男でした。 
   気前のいい男の話は、お城(しろ)にまでとどき、王さまをイライラさせました。 
  「わしはこの国の王さまだ。よく人に、ものをやるが、だれ一人として、わしのことを気まえがよいなどとは、いってくれない」 
   そこで、王さまは家来(けらい)にいいつけました。  
  「そんなに気前がよいのなら、風のようにはやいといわれている、男のウマをもらってくるがいい。いくらなんでも、世界一(せかいいち)とうわさされているあの名馬を、手ばなすわけはないと思うがな」 
   家来はさっそく、アツムタイのところへいきました。  
   それは、雪のふる、寒(さむ)い日のことでした。 
   ところがこの時、アツムタイの家には、王さまの家来をもてなすごちそうがありませんでした。  
   アツムタイは考えて、ウマ小屋(ごや)にいる世界一(せかいいち)はやいという名馬を殺(ころ)して、家来をもてなしたのでした。 
   つぎの朝、家来が王さまの用件(ようけん)をつたえると、アツムタイは、なきながら、 
  「もうしわけ、ございません。じつは、あなたさまをもてなすものがなかったので、昨日(きのう)、そのウマをごちそうしてしまったのです。王さまのおのぞみをかなえてさしあげることは、できなくなってしまいました」 
   家来はお城(しろ)に帰り、アツムタイの気前のよさと、けだかい気持(きも)ちを、王さまにつたえました。 
   すると王さまは、まえよりも、もっとイライラして、とんでもないおふれを出しました。  
  「わしより気前のよい男がいるなんて、ゆるせない。アツムタイを殺(ころ)して、その首をもってくれば、どっさりほうびをやるぞ」 
   しかし、アツムタイのように気まえのいい男を、殺(ころ)そうと思うものは、国じゅうさがしても、たった一人しかいませんでした。 
   さて、その一人の男は、くる日もくる日も、アツムタイをさがしまわっていました。  
   しかし、見つけることは、できませんでした。  
   ある日のこと、男はつかれきって、見知らぬ人のテントにとめてもらうことになりました。  
   テントの主人(しゅじん)は、旅(たび)の男を心よくむかえ入れ、おいしい食事(しょくじ)を用意(ようい)してくれました。 
   そして、気持(きも)ちのいい寝床(ねどこ)まで、こしらえてくれたのです。 
   つぎの朝、旅(たび)の男は、主人(しゅじん)にいいました。 
  「わたしは王さまの命令(めいれい)で、アツムタイという男をさがしているのです。どうしたらその男をさがし出すことができるか、いい知恵(ちえ)はありませんか?」 
   だまって聞いていた主人(しゅじん)は、いきなり外に出ていきましたが、しばらくすると、するどい刀(かたな)をもって帰ってきました。 
   そして、旅(たび)の男に刀をさし出して、いうのでした。 
  「お客(きゃく)さま。わたしがおさがしの、アツムタイでございます。あなたがわたしの首をほしいといわれるのなら、さしあげましょう。どうぞ、バッサリときりおとしてください」 
   旅(たび)の男は、ビックリしました。 
   まさか、この男がアツムタイだったとは。  
   しかし、こまっている自分をとまらせてくれ、食事(しょくじ)や飲み物(のみもの)まで用意(ようい)をしてくれた主人(しゅじん)を、とても殺(ころ)す気にはなれませんでした。 
   こうして旅(たび)の男は、とうとう王さまの命令(めいれい)をはたさず、お城(しろ)に帰っていきました。 
   そして王さまに、アツムタイのことを報告(ほうこく)したのです。 
   すると王さまは、自分のやろうとしたことを深(ふか)く反省(はんせい)していいました。 
  「わしはアツムタイのように、自分の首をさし出す気にはとてもなれん。あの男こそ、本当に世界(せかい)で、一ばん気前のよい男だ」 
      おしまい         
         
         
        
       
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