3年生の世界昔話(せかいむかしばなし) 
          
          
        イラスト myi   ブログ sorairoiro 
         
親指姫 
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細 
親指姫のぬりえ 
      
       
      
       
      
        
          | ♪音声配信(html5) | 
         
        
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          | 音声 得本綾(コトリボイス) ラジオHP | 
         
       
      
       むかしむかし、一人ぼっちの女の人が、魔法使いにお願いしました。 
  「わたしには、子どもがいません。小さくてもかまわないので、可愛い女の子が欲しいのです」 
        
        すると魔法使いは、種を一粒くれました。 
  「これを育てれば、願いがかなうだろう」 
   女の人が種をまくと、たちまち芽が出てつぼみが一つふくらみました。 
  「まあ、何てきれいなつぼみでしょう」 
   女の人が思わずキスをすると、つぼみが開きました。 
   すると、どうでしょう。 
   そのつぼみの中に、小さな女の子が座っていたのです。 
        
        女の人は、その小さな女の子にキスをしました。 
  「はじめまして。あなたの名前は、親指姫よ」 
   
   女の人は小さな親指姫を、それはそれは大切に育てました。 
   親指姫はお皿のプールで泳ぎ、葉っぱの舟をこぎながらきれいな声で歌いました。 
        
        そして夜になると、クルミのからのベッドで眠ります。 
   おふとんは、花びらでした。 
   
   さて、ある晩の事です。 
   ヒキガエルのお母さんが、寝ている親指姫を見つけました。 
  「あら可愛い。息子のお嫁さんに、ちょうどいいわ。ゲロゲロ」 
        
        ヒキガエルのお母さんは親指姫を連れていくと、スイレンの葉っぱに乗せました。 
  「さあ、起きるんだよ。今日からお前は、わたしの息子のお嫁さんだよ。そしてこの沼が、お前の家さ。いいところだろ。息子を連れて来るから、ここにいるんだよ。ゲロゲロ」 
   ヒキガエルのお母さんは、そう言ってどこかへ行ってしまいました。 
   一人残された親指姫は、シクシクと泣き出しました。 
  「ヒキガエルのお嫁さんなんて、いやよ。ドロの沼も、きらいだわ」 
   すると、その声を聞いた魚たちが集まり、 
  「かわいそうに、あのヒキガエルお嫁さんだなんて」 
  「ねえ、逃がしてやろうよ」 
  と、スイレンのくきをかみ切ってくれました。 
  「ありがとう。魚さん」 
   くきを切られたスイレンの葉っぱは、水の流れに流れていきます。 
   親指姫は飛んでいたチョウチョウにお願いして、葉っぱを引っ張ってもらいました。 
        
        チョウチョウのおかげで、葉っぱはどんどん川を下っていきます。 
   するとそれを、コガネムシが見つけました。 
  「おや、珍しい虫がいるぞ」 
        
        コガネムシは親指姫を捕まえると、森の奥へと連れて行ってしまいました。 
   おかげで親指姫は、森の奥で一人暮らしです。 
   親指姫は花のミツを食ベて、草にたまったつゆを飲んで、葉っぱにくるまって眠ります。 
        
        やがて冬がきて、空から雪が降ってきました。 
  「ああ、何て寒いのかしら」 
   寒さに震えながら歩いていた親指姫は、野ネズミの家を見つけました。 
  「あの、寒さで困っています。どうか、中へ入れてくれませんか?」 
   親指姫が声をかけると、野ネズミのおばさんが出てきて言いました。 
        
       「おやおや、かわいそうに。さあ、中はあったかいし、食ベ物もたくさんあるよ。遠慮せずに、いつまでもいるといいよ」 
   こうして親指姫は、野ネズミのおばさんと一緒に暮らす事になりました。 
   
   さて、野ネズミの家のさらに地面の奥には、お金持ちのモグラが住んでいました。 
  「なんて可愛い娘だろう」 
        
        親指姫を気に入ったモグラは、毎日遊びにきます。 
           
   ある日の事、親指姫はけがをして倒れているツバメを見つけました。 
   やさしい親指姫は、毎日ツバメの世話をしました。 
        
       「どうか元気になって、もう一度歌って。わたし、あなたの歌が大好きよ」 
   春になり、すっかり元気になったツバメが親指姫に言いました。 
  「あなたのおかげで、また飛べるようになりました。さあ、一緒に南の国へ行きましょう。南の国は、とってもいいところですよ」 
  「ありがとう。でも、いけないわ」 
  「どうして?」 
  「だって、わたしがいなくなったら、お世話になった野ネズミのおばさんがさびしがります」 
  「・・・そうですか。では、さようなら」 
   ツバメは親指姫に礼を言うと、南の国へ飛んでいきました。 
   
   夏が来ると、野ネズミのおばさんが言いました。 
  「親指姫や、いい話ですよ。なんとお金持ちのモグラさんが、あなたをお嫁に欲しいんですって。よかったね、モグラさんに気に入ってもらって。秋になったら、モグラさんと結婚するのですよ」 
   親指姫は、ビックリしました。 
   モグラはきらいではありませんが、モグラと結婚したらずっと地面の底で暮らさなければなりません。 
   モグラは、お日さまも花も大きらいだからです。 
   夏の終りの日、親指姫は野原で言いました。 
  「さようなら、お日さま。さようなら、お花さんたち。わたしは地面の底に行って、もう二度とあなたたちに会えません」 
   親指姫は悲しくなって、泣き出しました。 
   その時、空の上から聞き覚えのある声が聞こえました。 
  「親指姫。お迎えに来ましたよ」 
   あの時助けたツバメが、飛んできたのです。 
  「聞きましたよ、モグラがあなたをお嫁さんにしたいと。さあ、今度こそ一緒に行きましょう」 
  「ええ、行きましょう」 
   ツバメは親指姫を背中に乗せて、大空を飛んでいきました。 
        
        何日も何日も南へ飛んで、着いたのは花の国です。 
   ツバメは花の上に、親指姫をおろしました。 
   花の上には、親指姫と同じくらいの大きさの男の子が立っていました。 
        
       「ようこそ、かわいい娘さん」 
   この男の子は、花の国の王子さまです。 
  「さあ、これをどうぞ」 
   王子さまは、親指姫の背中に羽をつけてくれました。 
   それから親指姫は、花の国の王子と結婚しました。 
   二人は花から花へと飛びまわりながら、いつまでも幸せに暮らしました。 
      おしまい         
         
         
        
       
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