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        6年生の世界昔話 
          
          
         
あなたの大切な物 
グリム童話 →グリム童話のせつめい 
      
       むかしむかし、まずしい農家に、とてもかしこい娘(むすめ)がいました。 
   王さまに気に入られた娘(むすめ)は、王さまと結婚(けっこん)して、王妃(おうひ)さまとなりました。 
   娘(むすめ)が王妃(おうひ)さまとなって、何年かがすぎたある日のことです。 
   まきを売りにきた農民たちが、空の荷車を止めてきゅうけいしていました。  
   すると、ある荷車を引いているウマが急に産気(さんけ)づき、かわいい子ウマをうんだのでした。  
   しかし、何を思ったのか、その子ウマは、となりにいた別の荷車のウシをお母さんとかんちがいして、そのウシのそばに座(すわ)りこんでしまったのです。 
   すると、ウシの飼い主が子ウマは自分のものだと言い出して、ウマの持ち主とけんかを始めたのです。  
   そこヘ現れたのが、王さまでした。  
   ウマの飼い主とウシの飼い主が、それぞれ王さまにうったえました。  
  「うちのウマが子ウマをうんだのです。あの子ウマはうちのウマです」 
  「いいえ。うちのウシが子ウマをうんだのです。そのしょうこに、子ウマはうちのウシからはなれようとしません」 
   ウシの持ち主のいいぶんはムチャクチャでしたが、王さまはこういったのです。  
  「子どもはお母さんをしたうもの。子ウマがウシをしたっているのなら、子ウマのお母さんはウシに間違(まちが)いない」 
   こうして子ウマは、ウシの持ち主のものになったのでした。  
   せっかく産まれた子ウマをとられたウマの持ち主は、その場でいつまでもくやし泣きをしていました。  
   それを見ていた王妃(おうひ)が、ウマの持ち主に近寄ります。 
   彼女(かのじょ)は、ウマの持ち主にあるアイデアを教えました。 
   そして、そのアイデアが決して、彼女(かのじょ)の考えだといわないと約束させたのです。 
   さて次の日。  
   王さまが道を歩いていると、町の広場でウマの持ち主が魚取りのアミで魚をとろうとしていました。  
   ふしぎにに思った王さまが尋(たず)ねると、ウマの持ち主はいいました。 
  「ウシに子ウマがうめるものなら、町の広場で魚だってとれるはずです」 
   このあてつけに、王さまはおこりました。  
  「おまえの考えではあるまい。誰(だれ)がそんなことを思いついた!」 
  「へい、じつは・・・」 
   ウマの持ち主は、本当のことを白状(はくじょう)してしまいました。  
   すると王さまは、妃(きさき)の所へどなりこみました。 
  「わしをだますような妃(きさき)はいらん! 自分の大切なものをひとつやるから、出ていけ!」 
   そしてふたりは、さいごにお別れの酒をくみかわしました。  
  「これでそなたとは、おわかれだな・・・」 
  「そうですわね」 
  「妃(きさき)よ・・・」 
  「はい」 
  「・・・その、わしに、なにか言うことはないのか?」 
  「別に、なにもありません」 
  「・・・そうか」 
   王さまは自分の言ったことに後悔(こうかい)していましたが、妃(きさき)があやまろうとしないので、言葉を取り消すことができません。 
   王さまはションボリしていましたが、妃(きさき)はというと、あれあれ、目がわらっていますね。 
   きっと、またなにかを、たくらんでいるのでしょう。  
   王さまはそんな妃(きさき)には気づかず、かなしさをまぎらわそうと、盃(さかずき)のお酒を一気にのみほしました。 
   じつはそのお酒、妃(きさき)が眠り薬(ねむりぐすり)を入れていたのです。 
   次の朝、王さまが目覚めたのは、きたない農家のベッドの上でした。  
   ここは、妃(きさき)の実家です。 
  「いったい、これは何のまねだ?」 
   王さまが妃(きさき)にたずねると、妃(きさき)はニッコリ笑っていいました。 
  「王さまはわたしに、一番大切なものをひとつやるといいました。ですから、わたしはわたしの一番大切な王さまをいただいてきただけですわ」 
   この言葉にすっかり感動した王さまは、自分の裁判(さいばん)が間違(まちが)いだったことをみとめると、あのウマの持ち主に十頭の子ウマをやることを約束し、そのまま妃(きさき)と仲よくお城(しろ)へと帰ったのでした。 
      おしまい         
         
        
       
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