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        5年生の世界昔話 
          
          
         
クマとおばあさんとシャオホン 
中国の昔話 → 中国のせつめい 
       むかしむかし、あるところに、おばあさんと女の子がすんでいました。 
   女の子の名まえは、シャオホンといいます。 
   二人は、とてもびんぼうでしたが、とてもしあわせでした。  
   ある年の春。  
   おばあさんは、畑にダイコンのタネをまきました。  
  「どっさりダイコンをつくって、どっさりシャオホンに食べてもらおう」 
   おばあさんは、まがった腰(こし)をたたきながら、毎日毎日、畑の草をとり、水をまき、こやしをふりかけました。 
  ♪はやく、なれなれ。 
  ♪でっかいダイコン。 
  ♪うんとなれなれ。 
  ♪でっかいダイコン。 
   夜も昼もはたらきつづけて、やがて秋になりました。  
   ところがどうしたわけか、ダイコンは、たったの三本しかはえてきません。  
   おばあさんは、シャオホンにいいました。  
  「いつまでもガッカリしていても、ダイコンはふえやしない。一本目のほそいダイコンは、わたしが食べて、二本目の中くらいのは、となりのおばあさんにやって、三本目の太いダイコンは、シャオホンにあげようね」 
   おばあさんが川で三本のダイコンをあらっていると、山のてっぺんからクマがかけおりてきました。  
  「おい、そのダイコンをよこせ! よこさないと、シャオホンをたべてしまうぞ!」 
  「ひぇー! はっ、はい、どうぞ」 
   おばあさんは、細いダイコンをクマにあげました。  
   クマは、そのダイコンを一口で食べると、  
  「まだ腹(はら)がへってるぞ。それもよこせ」 
   おばあさんは、中くらいのダイコンもあげました。  
   クマは、そのダイコンを二口で食べると、  
  「まだ腹(はら)がへってるぞ。それもよこせ」 
   するとおばあさんは、太いダイコンをしっかりとかかえていいました。  
  「このダイコンはシャオホンのだから、やれん」 
   そのとき、むこうから、物売りがやってくるのが見えました。  
  「ようし。それではこんや、シャオホンをくいにいくぞう」 
   クマはどなると、あわてて山へかけあがっていきました。  
   おばあさんがダイコンをかかえて、オイオイと泣いていると、そこへやってきたのは針(はり)売りです。 
   つづいて、ばくちく売りと、油売りと、エビ売りと、石うすをかついだ男が、ぞろぞろやってきました。  
  「おばあさん。なにを泣いているんだい?」 
  「それは・・・」 
   おばあさんは、いままでのことをすっかり話してしまうと、またオイオイと泣きだしました。  
   針(はり)売りと、ばくちく売りと、油売りと、エビ売りと、石うすをかついだ男は、よし、よし、とうなずいて、まず、針(はり)売りがおばあさんに針(はり)をわたしました。 
   それから、ばくちく売りは、ばくちくを、油売りは油を、エビ売りはエビを、石うすをかついだ男は石うすを、おばあさんの前にわたしました。  
  「これで、なまいきなクマをやっつけてしまえ!」 
  「でもなあ、こんなものもらっても・・・」 
   おばあさんは家に帰ると、針(はり)と、エビと、油と、ばくちくと、石うすをほうりだして、オイオイと泣きました。 
  「シャオホンや。どうしたらいいだろうね」 
   シャオホンはしばらく考えていましたが、やがて元気よくいいました。  
  「だいじょうぶよ。おばあさん。わたしにいい考えがあるわ」 
   夜になりました。  
   山のてっぺんからクマがおりてきて、シャオホンの家の前でどなりました。  
  「おい。あけろ!」 
   シャオホンとおばあさんは、ベッドの下にかくれてだまっています。  
  「おい。あけろったら!」 
   クマは、ドン! と、戸をたたきました。  
   そのとたん、クマは、  
  「うわっ。いててて!」 
  と、とびあがりました。 
   クマの手には、針(はり)がなん本もつきささっています。 
   かしこいシャオホンが、針(はり)を戸にさしておいたのです。 
   クマはカンカンにおこり、戸をメリメリふみやぶって、へやの中にとびこみました。  
  「シャオホンは、どこだ?」 
   クマは、台所をのぞきました。  
   かまどには、ナベがかかっています。  
   クマがナベのふたをとると、中からエビがとび出てきて、手のハサミでクマの鼻をパチン!  
  「うわっ。いたたた! こいつめ。はなせえー!」 
   でも、エビはクマの鼻にぶらさがって、なかなかはなれません。  
   うんうんとひっぱって、やっとエビをはなすと、ナベの中にたたきつけました。  
  「このエビめ。ナベでにて、くってやる!」 
   クマは、まっ赤にはれあがった鼻をさすりながら、かまどに火をつけました。  
   すると、かまどの中からばくちくがとび出して、  
  「パパーン!」 
   クマの目玉にとびこみました。  
  「ウヒャー!」 
   クマは目をつぶされて、おおあわてです。  
  「なんにも見えん! おれの目玉はどこへいった?」 
   クマは、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。  
  ♪目玉よ、目玉。 
  ♪どこにいる? 
  ♪いたら、へんじをしておくれ。 
   クマのへんな歌があまりにもおかしいので、シャオホンは思わず、「プッ」とふきだしてしまいました。  
  「だれだ! いま笑ったのは! ははあーん、シャオホンだな」 
   クマはシャオホンにむかって、ノッシノッシと近づいてきます。  
  「ああ、クマがくる。シャオホン、どうしよう?」 
   おばあさんは、ふるえ声でいいました。  
   ところがシャオホンは、手をポンポンとたたきながら、  
  「クマさんこっち。手のなるほうヘ」 
  と、はやしたてるのです。 
  「こいつめ。おれをバカにしくさって。いますぐくってやるぞう」 
   クマはうなりながら、ノッシノッシと近づいてきます。  
  「ああ、シャオホン。どうしよう? クマがくるよ」 
   おばあさんは、大声でさけびました。  
   クマは立ちどまると、  
  「ははん。おばあさんもそこにいるな。おまえもシャオホンもくってやる」 
  「やめておくれ。くうのはわたしだけにしておくれ」 
   おばあさんは、手をあわせてたのみました。  
   けれどクマは、  
  「だめだ、だめだ。もう、かんべんできん」 
  と、いうと、シャオホンにとびかかろうとしました。 
   そのとき、ツルリンと足がすべって、ドタンと床(ゆか)にひっくりかえりました。 
   かしこいシャオホンが、床(ゆか)に油をこぼしておいたのです。 
   クマはあおむけにひっくりかえったまま、ツルツルとすべっていきます。  
   どんなにおきあがろうとしてもだめです。  
   ツルツルすべって、柱にぶつかりました。  
   そしてぶつかったひょうしに、柱の上から石うすが落ちてきて、クマはおせんべいのようにペチャンコになりました。  
   シャオホンとおばあさんは、ペチャンコになったクマをひきずって、うらの池にポチャンとなげこむと、笑いながら帰ってきました。  
      おしまい         
         
        
       
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