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        3年生の世界昔話(せかいむかしばなし) 
          
          
         
しあわせの王子 
ワイルドの童話(どうわ) → ワイルドの童話(どうわ)のせつめい 
      
      
       
      
        
          | ♪音声配信(html5) | 
         
        
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          | 朗読 : 琵琶  運営サイト : 琵琶(びわ) | 
         
       
       
      
       
      
       
       むかしむかし、ある町には、美(うつく)しい「しあわせの王子」の像(ぞう)がありました。 
   ピカピカと、金色にかがやく体。 
   青いサファイアのひとみ。 
   腰(こし)の剣(つるぎ)には、大きいルビーがついています。 
   町の人たちは、このすばらしい王子のように、しあわせになりたいと願(ねが)いました。 
   冬が近づいてきた、ある寒(さむ)いタ方のことです。 
   町にツバメが一羽、飛(と)んできました。 
  「ずいぶんと遅(おく)れちゃったな。みんなはもう、エジプトに着(つ)いたのかなあ。ぼくもあした、旅(たび)に出よう」 
   ツバメは王子の足元にとまり、そこで眠(ねむ)ろうとしました。 
   すると、ポツポツと、しずくが落(お)ちてきます。 
  「あれれ、雨かな? くももないのに・・・。あっ、王子さまが泣(な)いている。もしもし、どうしたのですか?」 
   おどろいたツバメがたずねると、王子は答えました。  
  「こうして高い所(ところ)にいると、町じゅうの悲(かな)しいできごとが、目に入ってくる。でもぼくには、どうすることもできない。だから泣(な)いているんだよ。ほら、あそこに小さな家があるだろう。子どもが病気(びょうき)で、オレンジがほしいと泣(な)いている。お母さんは一生けんめい働(はたら)いているのに、貧(まず)しくて買えないんだ」 
  「それは、お気のどくに」 
  「お願(ねが)いだ、ツバメくん。ぼくの剣(つるぎ)のルビーをあそこへ運(はこ)んでおくれ」 
  「・・・うん。わかった」 
   ツバメはしぶしぶ、王子の腰(こし)の剣(つるぎ)のルビーをはずして、運(はこ)んでいきました。 
   そして、熱(ねつ)で苦(くる)しんでいる男の子のまくらもとに、ルビーを置(お)くと、 
  「がんばってね」 
   男の子をツバサで、そっとあおいで帰ってきました。  
  「ふしぎだな。王子さま、寒(さむ)いのに、なんだかからだがポカポカする」 
  「それは、きみがいいことをしたからさ、ツバメくん」 
   つぎの日、王子はまた、ツバメにたのみました。  
  「ぼくの目のサファイアを一つ、才能(さいのう)のある貧(まず)しい若者(わかもの)に運(はこ)んでやってくれないか」 
  「でもぼく、そろそろ出発(しゅっぱつ)しなくちゃ」 
  「お願(ねが)いだ。きょう一日だけだよ、ツバメくん」 
  「・・・うん」 
   ツバメの運(はこ)んできたサファイアを見た若者(わかもの)は、目をかがやかせました。 
  「これでパンが買える。作品(さくひん)も書きあげられるぞ」 
   つぎの日、ツバメは、きょうこそ旅(たび)に出る決心(けっしん)をしました。 
   そして王子に、お別(わか)れをいいにいきました。 
  「王子さま、これからぼくは、仲間(なかま)のいるエジプトにいきます。エジプトはとてもあたたかくて、お日さまがいっぱいなんです」 
   けれど、王子はたのむのでした。  
  「もう一晩(ひとばん)だけいておくれ。あそこでマッチ売りの女の子が泣(な)いている。お金をかせがないとお父さんにぶたれるのに、マッチを全部(ぜんぶ)落(お)としてしまったんだ。だから、残(のこ)ったサファイアをあげてほしい」 
  「それでは、王子さまの目が、見えなくなってしまいますよ」 
  「いいんだ。あの子がしあわせに、なれるのなら」 
   人のしあわせのために、自分の目をなくした王子を見て、ツバメは決心(けっしん)しました。 
  「王子さま、ぼくはもう、旅(たび)に出ません。ずっとおそばにいます。王子さまの目のかわりをします」 
  「ありがとう」 
   ツバメは町じゅうを飛び回(とびまわ)り、貧(まず)しい人たちの暮(く)らしを見ては、それを王子に話して聞かせました。 
  「ぼくのからだについている金を、全部(ぜんぶ)はがして、貧(まず)しい人たちに分けてあげてほしいんだ」 
   ツバメは、王子のいいつけどおりにしました。  
   空から雪が、まい落(お)ちてきました。 
   とうとう、冬がきたのです。  
   さむさによわいツバメは、こごえて動 うご)けなくなりました。 
  「ぼくは、もうだめです。さようなら、王子さま。いいことをして、ぼくは、しあわせでした」 
   ツバメは王子にキスをすると、力つきて死(し)にました。 
   パチン!  
   王子の心臓(しんぞう)は、寒(さむ)さと悲(かな)しみのたえかねて、はじけてしまいました。 
   つぎの朝、町の人たちは、しあわせの王子の像(ぞう)が、すっかりきたなくなっているのに気づきました。 
  「美(うつく)しくない王子なんか、必要(ひつよう)ない。とかしてしまおう」 
   ところがふしぎなことに、王子の心臓(しんぞう)は、どんなにしてもとけません。 
   シカたがないので、心臓(しんぞう)だけは、そばで死(し)んでいたツバメといっしょにすてられました。 
   そのころ、神(かみ)さまと天使(てんし)が、この町へやってきました。 
  「町でいちばん美(うつく)しいものを、持(も)っておいで」 
   神(かみ)さまにいいつけられて、天使(てんし)が運(はこ)んだのは、王子の心臓(しんぞう)とツバメでした。 
   神(かみ)さまはうなずきました。 
  「よくやった。これこそが、この町でいちばん美(うつく)しいものだ。王子とツバメは、たいへん良(よ)いことをした。この2人を天国にすまわせよう。きっと、しあわせに暮(く)らすことだろう」 
      おしまい         
         
         
        
       
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