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          チロリン橋 
         
         
         
        チロリン橋 
        百物語 
         
        オリジナル版 
      
       むかしむかし、ある村に、とても貧乏な一家が住んでいました。 
 お父さんが病気で寝込んでからは、その日に食べる物もろくにありません。 
 
 ある日、お母さんは十歳になったばかりの娘のお春に言いました。 
「お春。 
 わたしたちは、とても貧乏だ。 
 田も畑もみんな長者さまの物で、わたしが日の出より早く働いて、夜に星が出るまでがんばっても、暮らしはちっとも良くならねえ。 
 それに、お父さんも無理がたたって寝込んでしまった。 
 家にはお前よりも小さい『お咲』や『作次』、それから赤ん坊の『吉三』もいる」 
「うん」 
「そこでお前には、隣村の長者の家へ子守りに行って欲しいのだけど、どうだろうか?」 
 するとお春は、しっかりと大きな声で言いました。 
「わかった。わたし、子守りに行ってくる! お父さんの病気が治るまで、何年でも行って来る!」 
「そうか。ありがとう」 
 お母さんは、お春に笑いかけようとして、思わず涙をこぼしてしまいました。 
 お母さんも本当は、お春を子守りに行かせたくはありません。  
 お母さんも子どもの頃に子守りをした事があるのですが、それはそれは大変な仕事です。 
 子守りといっても、赤ん坊の世話だけではないのです。 
 みんなが目を覚まさないうちに起き出して、『かまどの飯炊き』、『湯沸かし』をします。 
 そしてみんなの朝飯が終わると、急いでわずかなご飯をかき込んで、『食事の後始末』です。 
 その後は赤ん坊をあやしながら、『洗濯』、『拭き掃除』を終わらせ、『昼飯』、『晩飯』、『お風呂』の準備をするのです。 
 もう、体がいくつあっても足りないほどです。 
 でも、お春は涙をこらえて、 
「お父さんの病気が、良くなるまでは」 
と、歯を食いしばって頑張りました。 
 
 こんな毎日が、一年、二年、そして三年続いた、ある冬の事です。 
 長者が仏壇(ぶつだん)の奥にしまっておいたお金が、無くなってしまったのです。 
 家に奉公に来ている人たちは、長者に順番に調べられましたが、誰もが、 
「知らねえ」 
と、言います。 
 そして最後に、お春が調べられました。 
 長者は怖い顔で、お春に言います。 
「お前の家は、えらく暮らしに困っているからな。すぐに白状して金を返せば、今度だけは許してやってもいいぞ」 
 長者はお春を犯人と決め付けていますが、もちろん、お春はお金を盗んだりはしていません。 
「知らねえ、知らねえ。仏壇にさわった事は、一度もねえ」 
 お春は正直に言いましたが、いくらお春が言っても、長者は信じてはくれないのです。 
「盗んだのは、お前しかいないんだ! 白状するまで毎日でも取り調べてやるから、覚悟しろ!」 
 
 その夜の事です。 
 お春は、みんなが寝静まるのを待って、そっと屋敷を抜け出しました。 
 お春はふところに、お春が七つの祝いに買ってもらった大事な赤いぼっくり(→女の子用の下駄)を抱いています。 
「お母さん! お父さん!」 
 お春は真っ暗な田んぼ道を、泣きながら走りました。 
 そして何度も転びながらも、ようやく懐かしい家に帰って来たのですが、お春は家の前に立ちつくしたまま、家に入る事が出来ませんでした。 
 お春が奉公に出たお金は、すでに前払いでもらっているので、お春が逃げ帰ったと分かると、そのお金を長者に返さなければならないのです。 
(お母さん・・・。お父さん・・・) 
 帰るに帰れないお春は、いつの間にか村境の橋の上に立っていました。 
 ふところに入れたぼっくりの鈴の音が、小さく、 
♪チロリーン 
♪チロリーン 
と、鳴っていました。 
(もう、どうしたらいいのか分からない。長者の家には帰りたくないし、自分の家には帰れないし) 
 次の瞬間、 
 ザッパーン! 
 お春は自分でもわからないうちに、川へと身を投げてしまったのです。 
 そしてお春は、死んでしまいました。 
 
 その後、無くなっていた長者のお金が別の所から出てきたのですが、長者はお春が死んだのは自分には関係ないと、線香の一本もあげなかったそうです。 
 お春が身を投げたこの橋は、今でも橋を渡る時に耳をすますと、 
♪チロリーン 
♪チロリーン 
と、ぽっくりの鈴の音が聞こえてくると言われています。 
 そこで村人たちは、この橋を『チロリン橋』と呼ぶようになったそうです。  
      おしまい 
      この作品は、読者からの投稿作品です。 
           
         
      作者 :つれづれ居士         
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