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          亡霊の果し合い 
         
        
         
         
        亡霊の果し合い 
        百物語 
         
        オリジナル版 
      
       むかしむかし、根来仙三郎(ねごろせんざぶろう)という、剣術に優れた若い侍がいました。 
         
 ある秋の日の事、仙三郎(せんざぶろう)は、ふとした事から友だちの松山新五郎(まつやましんごろう)と口論(こうろん)を始めました。 
「だから、お前の方が悪い」 
「いいや、悪いのはお前の方だ」 
 二人は言い張って、お互いにゆずりません。 
 そしてとうとう、二人は果し合い(はたしあい→決闘)とする事になったのです。 
「明日の辰の刻(たつのこく→朝の八時ごろ)。あかねが原に来い」 
「よしっ。キッパリとかたをつけよう」 
 
 その夜、仙三郎は机に向かって本を読んでいましたが、頭の中は明日の果し合いの事でいっぱいです。 
(なぜ、あいつは自分の間違いを認めないのだ? あいつが意地を張るせいで、長年の友を失う事になったではないか) 
 そんな事を考えていると、ふと庭に人の気配を感じました。 
(もしや、あいつが謝りに来たのか?) 
 仙三郎が庭の茂みに目を向けると、茂みのかげに怪しい二つの影が動いていました。 
「なに奴だ!」 
 仙三郎は刀を取ると、縁側に立って叫びました。 
 しかし二つの影は答えず、お互いに争っている様子です。 
 月明かりをたよりに仙三郎が目を凝らすと、それは刀を抜いて戦っている二人の武士でした。 
 それもよろいかぶとに身をかためた武士で、かぶとの下から見える顔は死人の様に青白いものでした。 
 年はまだ若いようですが、体はまるで骨だけのようです。 
 二人は、いくたびも刀を合わせます。 
 やがて一方が力尽きて、よろめきながら倒れました。 
 しかしすぐに不思議な力で突き上げられる様に起き上がり、また相手に切りつけます。 
 そして相手の武士が倒れると、これまた不思議な力で突き上げられる様に起き上がり、相手に切りつけていきます。 
 そんな事が、二人の間で何度も何度も続けられました。 
 そのうちに、一人の武士が言いました。 
「ああ、おれはもう駄目だ」 
「おれも駄目だ。お前を殺すくらいなら、おれが死んだほうがましだ」 
「いや、死ぬならおれが死のう。だが、この刀が、この刀が」 
「そうだ。どうしても、刀が手から離れぬのだ」 
「おれたちはきっと、この刀の亡霊(ぼうれい)にとりつかれているのだろう」 
「刀の亡霊め。なぜおれを苦しめる。いや、おれたち二人を苦しめるのだ」 
「刀めっ」 
「にっくき、刀めっ」 
「こんな事なら、あんな口論など、しなければよかった」 
「そうだ。つまらぬ事で果し合いをしたから、刀の亡霊にとりつかれたのだ」 
 二人の武士はうめく様に言って、なおも戦いを続けました。 
 それを見ていた仙三郎は、思わず叫びました。 
「やめろーっ!」 
 そして自分の大きな声に、仙三郎はハッと我に返りました。 
「・・・ゆっ、夢か」  
 
 あくる朝、仙三郎は急いで新五郎の屋敷をたずねると、新五郎が真っ青な顔で出てきました。 
「おい、どうかしたのか? 顔色が悪いぞ!」 
「おお、仙三郎か。よく来てくれた。実はおれも、お前の家へ行こうと思っていたところなんだ」 
 話を聞くと、新五郎も仙三郎と同じ様に、刀の亡霊にとりつかれた二人の武士の夢を見ていたのです。 
 二人は二人ともが同じ夢を見ていた事に驚きましたが、やがてどちらからともなく言いました。 
「今回の事は、わたしが悪かった。謝るから許して欲しい」 
「いや、わしの方こそ悪かった。謝るのはわしの方だ」 
 二人の若い侍は手を握り合って、仲直りしたそうです。 
      おしまい 
      この作品は、読者からの投稿作品です。 
           
         
      作者 :つれづれ居士         
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